本来は対ソ連用
太平洋戦争の教訓をふまえて、戦後の海上自衛隊は「対潜の鬼」になり、冷戦期はソ連潜水艦を想定していました。ところが、1980年代にはソ連潜水艦の性能が伸び、潜航深度と水中速力が向上しました。
このソ連の新型潜水艦に対抗するべく、海上自衛隊は新しい対潜魚雷に取り組み、1997年に「97式短魚雷」が誕生します。
- 基本性能:97式魚雷
| 重 量 | 320kg |
| 全 長 | 2.8m |
| 直 径 | 324mm |
| 速 力 | 約60ノット(時速110km) |
| 射 程 | 約15km |
| 深 度 | 最大1,500m |
| 弾 頭 | 成形炸薬弾(約50kg) |
| 価 格 | 約1億円 |
97式魚雷の開発は1985年に始まり、三菱重工業が製造した国産の短魚雷です。
同じ魚雷であっても、潜水艦が発射するタイプは「長魚雷」と呼び、逆に対潜戦に使うものは「短魚雷」に分類します。97式魚雷は後者にあたり、護衛艦の三連装発射管、あるいは哨戒ヘリから放ち、敵の潜水艦を攻撃する兵器です。
弾頭部分に成形炸薬弾を採用したところ、潜水艦の複合隔壁(外殻・内殻)を容赦なく貫き、確実な撃沈能力を確保しています。
成形炸薬弾頭といえば、厚い装甲を貫く高い威力を持ち、対戦車弾に使うような代物です。97式は日本の魚雷で初めて成形炸薬弾を使い、対潜戦における海自の「殺意」を具現化したといえます。
一方、ソナーが対応する音波域は広がり、水中での捜索・識別能力を高めたほか、信号などの音響情報はデジタル化しました。当時の最新プログラム機能を用いながら、識別・誘導システムを改良したところ、最も効果的な角度で目標に当たり、損害を最大化する設計になっています。
また、推進には蒸気機関の一種を使うものの、これは排気を出さない仕組みのため、深海での航行性能を強化しました。
いまだに主力の短魚雷
97式魚雷はソ連潜水艦を念頭に置き、深海での能力を高めたにもかかわらず、開発中にソ連は無くなり、本来の仮想敵を失いました。
しかし、そのまま開発と実戦配備は進み、2000年代以降はロシア潜水艦の復活、中国海軍の急速な台頭を受けて、その重要性が再確認されました。いまも主力の短魚雷であって、ほとんどの海自護衛艦とともに、多くの哨戒ヘリで運用されています。
なお、ロケットブースターを付ければ、いわゆる「アスロック」に改造できるため、07式アスロックの弾頭に採用されました。
現在も主力の短魚雷とはいえ、新しい12式魚雷も開発されており、いずれは主力の座を譲る予定です。ただ、12式魚雷はコストを削減するべく、97式とは約40%の部品で共通化を図り、引退後の97式は部品取りに再利用されます。
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