島嶼戦に!アメリカ海兵隊のMMRC Bravo偵察艇とは?

アメリカ
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多目的の小型機動艇

中国の海洋進出に対抗するべく、アメリカ海兵隊は「EABO戦略」に基づいて、高機動・分散戦術を採用しました。戦車大隊を廃止した代わり、ハイマースのような機動兵器を選び、無人対艦兵器も配備しました

こうした動きのなか、新たな小型偵察艇が戦列に加わり、「MMRC Bravo」と命名されました。

  • 基本性能:MMRC Bravo
重 量 約6.5t
全 長 約11m
乗 員 8〜12名
速 力 40〜50ノット(時速74〜92km)
航続距離 150km以上
兵 装
(オプション)
7.6mm機関銃
12.7mm機関銃
ミサイル発射機
積載能力 貨物:2トン
価 格 約4.5億円

MMRCとは多目的偵察艇の略であって、オーストラリアの会社が開発したあと、2024年に米海兵隊が試験導入しました。NATOで使うコードにちなみ、ウィスキー・ブラボーの愛称を持ち、沿岸でさまざまな作戦に投入可能です。

40ノット以上の高速力を誇るほか、1個分隊(8〜12名)を乗せながら、そのまま浅瀬や沿岸域に侵入できます。中・大型艦艇では進入できず、ゴムボートでは能力不足な場面で役立ち、両者のギャップを埋める存在です。

従来型のゴムボートは小さく、隠匿性は優れていたものの、積載能力と航続距離が足りず、使用場面は限られてきました。これがMMRCならば、人員・装備の搭載力で上回り、長距離輸送に対応しました。

しかも、揚陸艦艇だけではなく、トレーラーに積載できるため、陸上移動で別の地点に移り、そこから任務に出発できます。

設計の工夫で航行安定性も高く、複雑な沿岸環境での運用を考えて、低速・高速の双方に最適化しました。複合素材の船体は軽く、高速性能に寄与するほか、衝撃を軽減して乗員を保護します。

また、最新の通信・航法システムとともに、高度なセンサー機能を組み込み、リアルタイムで情報を送受信しながら、高い状況識別能力を発揮します。

具体的な装備はモジュール式になり、任務に合わせてカスタマイズできるため、優れた運用柔軟性を実現しました。たとえば、威力偵察では自衛用の機関銃、ミサイル発射機まで積み、逆に最低限のシステム以外を降ろせば、物資の積載能力を増やせます。

偵察から輸送まで

現行のEABO戦略によると、海兵隊は第1列島線上に小部隊を置き、お互いに連携しながら、高機動兵器で敵の活動を妨害します。

これら島々には滑走路がなかったり、小さな港湾しかない場所が多く、小型艇が輸送と補給に欠かせません。

まず、大きな島に拠点を築き、一定の戦力と物資を集積したあと、そこから先の島々には小型艇で運び、いわゆる「末端輸送」を実施します。

このとき、浅海域を航行できる能力、高速での突破能力があると、発見リスクは大きく下がり、任務成功率は高まるわけです。先述のような武装を積めば、事実上の小型戦闘艇に変わり、突破力を強化できます。

MMRCは末端輸送のみならず、小さな離島間を行き交い、その交通・連絡も担う役目です。この島嶼間輸送を通して、分散配置された部隊の孤立を防ぎ、死活的な補給連絡線を保ちながら、EABO戦略を根底から支えます。

武装のイメージ図(出典:米海兵隊)

一方、占領された島を奪還する場合、事前に潜入・偵察せねばならず、ここでもやはり小型艇が必要でしょう。偵察にはドローン、無人水上艇も使うとはいえ、実際の人間が現地に赴き、目で確かめることは重要です。

MMRCはその一環として、発見されにくい沿岸部を高速で進み、持ち前の利便性を駆使しながら、部隊の活動能力を広げられます。

一例をあげると、偵察部隊・特殊部隊を届けたあと、現場に残って監視任務に就き、海に浮かぶ警戒センサーになります。そのISR能力(情報・監視・偵察)を活かして、敵に関するデータを味方に送り、中継拠点として稼働する仕組みです。

自衛隊が導入する可能性

この優れた汎用性をふまえて、米海兵隊は100隻以上を買い、海上偵察中隊に配備します。各中隊に18隻のMMRC Bravoを置けば、少数による潜入工作から威力偵察、一定の補給任務まで使う算段です。

ここに無人水上艇が加わると、有人・無人の混成部隊ができあがり、海兵隊が目指す将来像に合致します。

他方、先行量産型の単価は約4.5億円と高く、決して安価な装備ではありません。小型高速艇として利便性が高く、昨今のインフレ傾向を考えると、これぐらいは仕方ないかもしれません。

ただし、これは初期投資費用を含み、量産が進むにつれて、単価は徐々に下がる見通しです。

沖縄での訓練光景(出典:米海兵隊)

米海兵隊が第1列島線で用いる以上、MMRCは自衛隊とも関係性が深く、特に水陸機動団は興味を示すでしょう。水陸機動団は日本版の海兵隊にあたり、同じ島嶼戦を想定することから、米海兵隊と同様のニーズはあります。

水陸機動団の現状を鑑みると、潜入用には高速ゴムボートしかなく、あとはAAV-7水陸両用車ぐらいです。MMRCならば両者をつなぎ、同様に能力差を埋められます。

したがって、水陸機動団がMMRCに触れる機会は多く、米海兵隊での運用が進むにつれて、導入を検討するかもしれません。

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