島嶼戦が求める新型上陸艦
強襲揚陸艦は上陸作戦に欠かせないものの、大きすぎて沿海域では活動しづらく、小さな港では運用できません。
中国が西太平洋で影響力を強めるなか、アメリカ海兵隊は機動性重視に移り、小さくても使い勝手がよく、島嶼戦に適した揚陸艦を求めました。
その答えが「マクルング級」中型揚陸艦なのです。
- 基本性能:マクルング級揚陸艦
| 排水量 | 約4,000t |
| 全 長 | 100m |
| 全 幅 | 16m |
| 速 力 | 15ノット(時速28km) |
| 航続距離 | 4,000浬(7,400km) |
| 乗 員 | 18〜32名 |
| 輸送能力 | 貨物:約500トン 人員:約280名 |
| 搭載能力 | 小型高速艇×2 |
| 兵 装 | 30mm機関砲×1 |
| 建造費 | 約250〜270億円 |
まず、艦名はイラクで戦死した少佐、メーガン・マクルング氏にちなみ、海兵隊初の女性将校に敬意を込めました。
もともとは「軽水陸両用戦闘艦(LAW)」として計画されるも、当初の設計では単価が500億円以上にハネ上がり、あまりのコストに白紙化されました。あれこれ欲張ったところ、コストだけが無限にふくらみ、計画倒れになった形です。
その後、既存設計を使う現実路線に変わり、2025年末にオランダの「LST-100」に基づいて、事実上のライセンス生産を決めました。LST-100の設計図だけを買い、あとはアメリカで建造するため、造船所の雇用を確保できるとともに、コスト圧縮に成功しました。
そもそも、LST-100自体がコスト削減の産物であって、確立済みの民間設計を応用しながら、海軍向けにアレンジした船でした。その結果、設計図の購入費用は約5億円、1隻あたりの単価は約270億円に収まり、初期構想(LAW)の半額まで抑えました。
新採用のマクルング級(出典:米海兵隊)
そんなLST-100の米海兵隊版、「マクルング級」の特徴といえば、小さくても頑丈な船体を持ち、自ら浜辺に乗り上げながら、車両などを直接揚陸させる点です。
このビーチング能力を使うと、たとえ港湾施設がなくても、乗り上げた艦首のドアが開き、そのまま海岸に戦力を展開できます。人員面では1個中隊相当が乗り込み、貨物面では戦車を含む最大500トンを運び、小規模な部隊輸送に適任です。
艦の前部にはクレーンが付き、重い装備品・物資を揚陸したり、小型高速艇(2隻)を甲板に積み、その吊り下げに使われます。さらに、後方には飛行甲板も備えており、その運用能力は限定的ながらも、ヘリコプター・ドローンに対応しました。
武装は30mm機関砲しかないものの、甲板上にNMESIS対艦ミサイル、HIMARSロケット砲を配置すれば、一定の攻撃能力を獲得できます。
EABO構想との連携
米海兵隊が従来の対テロ戦争ではなく、島嶼戦用の「EABO構想」を進める限り、マクルング級はその一翼を担い、新戦略を具現化する存在になります。
EABO構想は機動展開、分散配置を目指す動きですが、その中核となるのが「海兵沿岸連隊(MLR)」です。このMLRをすばやく各島に送り込み、高機動兵器で敵を妨害するにあたって、マクルング級の活躍が期待されています。
強襲揚陸艦では目立ちすぎるうえ、接岸できる港が限られてしまい、小部隊の機動展開には不向きです。他方、中型のマクルング級ならば、港のない島や浅い入り江で活動しやすく、大型艦が行けない場所に戦力を届けられます。
つまり、強襲揚陸艦と小型揚陸艇の中間にあたり、両者の運用ギャップを埋めながら、作戦を補完する役割を果たすわけです。
予定では18〜35隻の大量建造を行い、2029年には1番艦が引き渡されるとはいえ、アメリカの悲惨な造船能力をふまえると、計画通りに進むかは分かりません。それでも、西太平洋で中国との競争が激化する以上、その能力は海兵隊の戦略に欠かせず、さらなる計画の失敗は許されません。


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