ロシアとウクライナが使うトーチカU・ミサイルとは?

トーチカUミサイル ミサイル
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ソ連生まれの旧式兵器

2022年4月8日、ウクライナ東部の都市クラマトルスクの鉄道駅。

1発のミサイルが降り注いだ結果、避難する大勢の民間人を巻き込み、死者50名以上、負傷者100名以上を出しました。

その惨劇をもたらした兵器こそ、ソ連製の「トーチカU」でした。

冷戦時代の短距離弾道ミサイルですが、現在もロシア=ウクライナ戦争で使われており、先ほどの事件を引き起こしました。

  • 基本性能:OTR-21 トーチカU
重 量 約2,000kg
全 長 6.4m
直 径 6.5cm
運用要員 3名
速 度 マッハ5.3(時速6,500km)
射 程 初期型:70km
改良型:120km
価 格 1発あたり約4,800万円

軍事関連で「トーチカ」といえば、コンクリート製の防御陣地ですが、ここではロシア語の「点」という意味になり、目標を点として精密に狙う発想です。

それまでの大型・無誘導のミサイルとは違い、小型で精密誘導が可能な地対地ミサイルとして、1968年にソ連で開発が始まりました。1975年には初期型の生産が始まり、1980年代から本格的に配備しました。

すなわち、トーチカはソ連が不正確・旧式から去り、精密誘導への転換を象徴する兵器でした。

トーチカUミサイルトーチカU

その後、改良型(1989年)では射程が120kmまで伸び、平均誤差半径は95m以内に改善しました。この平均誤差半径95mというのは、当時の基準では十分とはいえ、現代が数m以内であることを考えると、最近の精密誘導兵器には劣ります。

他方、発射システムは6輪式の車両に積み、短時間で準備・発射するべく、液体燃料から固形燃料に変更しました。ちなみに、この車両は水上航行もできるほか、NBC(放射線・生物・化学)防護機能も備えています。

クラスター弾使用の問題

現代兵器に比べて命中精度が低く、旧式化が著しいにもかかわらず、ソ連崩壊後の経済的混乱と困窮により、ロシアとウクライナで運用が続きました。

特にウクライナでは兵器の更新が進まず、旧ソ連兵器を大量に引き継いだ結果、2022年にロシアの本格侵攻が始まっても、少なくとも500発を保有していました。

それゆえ、開戦時は主な地対地ミサイルどころか、貴重な反撃手段にあたり、何度もロシア軍を攻撃しています。

ただ、使ったのが改良型とはいえ、命中精度が低い点は変わらず、これが誤爆につながりました。

加えて、トーチカUは「クラスター型」の弾頭になると、50個の破片子弾が収納されています。それぞれの子弾は爆発物を含み、さらに細かい破片に分かれながら、最終的に300以上の破片を撒き散らす仕組みです。

クラスター爆弾は非人道的な側面が強く、2008年のオスロ条約で禁止されていますが、ウクライナもロシアも条約に署名しておらず、現代戦で使われてきました。

トーチカUミサイル駅に着弾したミサイルの残骸

冒頭の巻き添え事件に戻ると、トーチカUの使用が特定されるも、問題は「どちらが発射したか」です。

当初、ロシアはトーチカUを保有しておらず、ウクライナ側の自作自演と批判しました。しかし、実際はロシアも開戦時に約200発は持ち、ウクライナで何度か使用してきました。

当然、ウクライナも運用している以上、自国民を誤爆した可能性が否めず、国際刑事裁判所(ICC)は事件を戦争犯罪として扱い、調査対象になっています。

一方、ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査によると、当時はロシアの発射車両が周辺で動き、ロシア軍の関与が強く疑われています。マリウポリ劇場の空爆、ブチャの虐殺など、数々の戦争犯罪をふまえると、ロシア軍が疑われるのは仕方ありません。

いずれにせよ、現代戦では精密誘導が欠かせず、誤爆の危険性に加えて、クラスター弾の問題を考えると、トーチカUの使用リスクは明白です。

もともとの保有数が少なく、双方とも初戦で使い尽くしたからか、最近は使用が確認されておらず、精密兵器が不足していた頃、戦争初期の混乱において、やむを得ず投入した形だったといえます。

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