自衛隊初の水陸両用戦闘車「AAV-7」と気になる後継

陸上自衛隊
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離島防衛向けに急いで購入

2010年代に中国の海洋進出が活発化し、南西諸島方面の離島防衛が急務となると陸上自衛隊は日本版海兵隊といえる水陸機動団を創設しましたが、この分野に関するノウハウも装備もない状況でした。

そこで実戦経験が豊富なアメリカ海兵隊に頼るわけですが、当面の装備については新たに開発する時間がなかったため、離島奪還に欠かせない水陸両用戦闘車は米海兵隊が使用していた「AAV-7」を取り急ぎ導入しました。

  • 基本性能:「AAV-7」水陸両用戦闘車
重 量 25.6t
全 長 8.16m
全 幅 3.27m
全 高 3.3m
要 員 3名
輸送力 兵員:21名
貨物:2.5t
速 度 地上:時速72.4km
水上:時速13km
兵 装 12.7mm機関銃×1
40mm自動擲弾銃×1
価 格 1両あたり約7億円

Assault Amphibious Vehicle model 7(水陸両用強襲輸送車7型)」の略称であるAAV-7は、1960年代にアメリカが開発したキャタピラ式の水陸両用戦闘車です。

そして、その役割は海上の輸送艦から出撃して兵士を上陸させること。

登場からすでに半世紀以上が経っているものの、使い勝手の良さから改修を重ねて現在も運用されています。本来任務は上陸作戦時の橋頭堡確保ですが、米海兵隊が投入された直近のイラク、アフガニスタン両戦争では市街戦などに投入されました。

輸送艦から発進するAAV-7(出典:アメリカ海軍)

上陸戦のプロ・米海兵隊が長年運用してきた実績に目を付けた陸自は、水陸機動団向けに計58両を購入して、一部の整備用教材を除いて佐世保の同部隊に集中配備しました。

ただ、調達されたAAV-7は改修されているとはいえ、あくまで米海兵隊の中古品であるため、その防弾性能と機動性で不安が残るとされています。

それでも、AAV-7は米海兵隊も現役で使っていることから互換性が期待でき、米軍の輸送艦で自衛隊のAAV-7を運用したり、整備面でも融通が効くはずです。こうした利点は日米共同作戦には欠かせないもので、相互運用を通じた戦力強化につながります。

後継は米軍と同じ?それとも国産か

とはいえ、急いで導入したAAV-7は「つなぎ」という位置付けが強く、水面下では後継の検討が進んでいると思われます。

参考対象となる米海兵隊は、機動力を高めた「EFV(Expeditionary Fighting Vehicle」なるものを導入するつもりだったところ、コスト増と予算削減のダブルパンチで中止に追い込まれました。

その結果、AAV-7は2035年まで続投となり、英伊共同開発の「ACV(Amphibious Combat Vehicle」に白羽の矢が立っている状況です。

こうしたアメリカの動きが日本にも影響を与えるなか、日米連携の重要性を考えれば、水陸機動団も同じACVを採用する可能性があります。

AAV-7から降車展開する隊員(出典:陸上自衛隊)

一方、防衛産業の大手・三菱重工業は「MAV(Mitsubishi Amphibious Vehicle)」という新型水陸両用車を研究開発していて、こちらは時速45kmという高速水上航行が「売り」です。

あくまで研究用の車両とはいえ、将来的な提案を想定していないはずがなく、国内産業の保護という政治判断が作用すれば、こちらに軍配が上がるかもしれません。

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