省人化、軽量化、低燃費が目玉の新型戦車
アメリカ軍は「最強の戦車」と名高いM1A2エイブラムスを愛用していますが、同戦車は近代化改修によるアップグレードを受けているとはいえ、既に登場から40年以上が経過していることから後継の開発を検討せねばなりません。そんな中、M1A2エイブラムスを手がけたゼネラル・ダイナミックス社が次世代主力戦車として「エイブラムスX」構想を発表し、エイブラムス・ファミリーの次世代を担う存在として提案しました。
⚪︎基本性能:エイブラムスX
重 量 | 約60t |
乗 員 | 3名 |
速 度 | 時速 |
兵 装 | 120mm滑腔砲×1 12.7mm機関銃×1 30mm機関砲×1 (遠隔操作式) |
価 格 | 不明 |
公開されたエイブラムスXは従来のエイブラムスとは全く異なる外見をしており、ステルス性を意識したデザインであることが分かります。最大の特徴は砲塔を完全刷新したことですが、自動装填装置を備えた無人砲塔を搭載することで乗員数を1名減らしたうえ、従来型のエイブラムスと比べて10トン以上の軽量化に成功しました。これによって省人化とともに、輸送手段と活動範囲の拡大も期待できるため、より迅速な戦力展開が可能となるでしょう。
また、M1A2エイブラムスの弱点である燃費については、ハイブリッド式の新型エンジンを採用することで燃料消費量の半減と静粛性の向上を実現しました。燃費を倍近く改善したことは車体の軽量化や行動距離の拡大のみならず、燃料輸送に努める兵站部隊の負担減にもつながります。
戦車として肝心の武装に関しては、引き続き120mm滑腔砲を主砲として搭載しますが、新型の射撃管制装置によって遠距離や複雑な地形における精密射撃能力が強化される予定です。さらに、AIを活用した自律機能を付与することで攻撃に至るまでの一部プロセスを自動化し、発射速度と命中精度の向上を試みます。ロシア=ウクライナ戦争では観測用の小型ドローンと地上の味方が連携した戦車戦や砲兵戦が繰り広げられましたが、エイブラムスXはAI機能を用いて無人機や僚友との連携能力を強化し、単なる戦車ではなく、戦場における情報共有および現場指揮の拠点としての役割も目指すのです。

他の武装として、砲塔上部に遠隔式の30mm機関砲を装備しているほか、同じく遠隔操作式の7.62mm機関銃、40mm擲弾銃、「戦車殺し」で有名なジャベリン対戦車ミサイルをオプションで装備できるそうです。防御力の詳細は不明ですが、陸上自衛隊の10式戦車と同じモジュール装甲が確認できるため、任務や状況に合わせた交換と追設が可能です。そして、前述のように無人砲塔を採用したことで乗員の生存性そのものが上がっていると言えます。
さて、デザインからして次世代感が満載なエイブラムスXですが、今回公表された車両はあくまで「技術実証車」ということなので配備を見据えた正式な開発が決まったわけではありません。現在、配備されているM1A2エイブラムスの最新型は「SEPv3」と呼ばれるバージョンであり、ゼネラル・ダイナミックス社はさらにその改良型である「SEPv4」を開発中です。したがって、エイブラムスXはあくまで「SEPv4」以降の最新バージョンとして、もしくはエイブラムス・シリーズに代わる次期主力戦車までの「つなぎ」として登場するでしょう。
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