まだ役立つ!陸自の155mm榴弾砲「FH70」の射程と後継

自衛隊のFH70榴弾砲 陸上自衛隊
この記事は約3分で読めます。

旧式だが、主力火砲

現代戦ではミサイルが飛び交い、ドローンが攻撃してくるとはいえ、「火砲」の重要性は変わっておらず、ロシア=ウクライナ戦争ではその価値が再認識されました。

激しい砲兵戦のなか、小型ドローンで偵察・弾着観測をしながら、最新の戦い方に適応してきました。

火砲の役割が再評価された形ですが、陸上自衛隊も昔から火力重視の姿勢を貫き、その充実ぶりは他国に引けを取りません。自慢の砲兵戦力のうち、数の上で主力を務めるのが、「FH70」という155mm榴弾砲です。

  • 基本性能:155mm榴弾砲「FH70」
全 長 9.8m (牽引時)
12.4m (射撃時)
全 幅 2.56m (牽引時)
全 高 2.56m (牽引時)
重 量 7.8〜9.6t
自走速度 時速20km
要 員 8名
射 程 最大24km
※ロケット補助推進弾は30km
発射速度 最大毎分6発
価 格 1門あたり約3.5億円

FH70の開発は1970年代に始まり、ドイツとイギリス、イタリアが手がけたあと、日本は1983年に導入しました。

計10カ国で採用されたものの、最多調達数は開発国の英独伊ではなく、なんと日本の420門になります。いまも約300門が現役であって、2位のイタリア(約160門)の倍近い数字です。

本家よりも多い調達数ですが、全国の特科部隊に配備された関係から、各駐屯地の式典で見かける機会が多く、一般にも馴染みのある大砲になりました。

自衛隊のFH70榴弾砲の後ろ部分後ろから見たFH70

そんなFH70は半自動式の補助装置に加えて、砲弾を載せる専用のトレイを持ち、当時としては速い装填速度、連続射撃を実現しました。

なお、移動時は「けん引」されるも、砲そのものはエンジンを搭載しており、約20kmの距離を時速15〜20kmで自走できます。それゆえ、陣地付近まではトラックで引っ張り、最後は自分で走行しながら、陣地展開する仕組みです。

射撃時の測定と照準は人力で行い、「職人技」に頼る部分が否めないため、精密射撃にはそれなりの訓練・技量が求められます。ただ、長らく運用してきたおかげか、扱い慣れているベテラン隊員が多く、その豊富な経験と熟練の技に基づいて、すばやい精密射撃を披露してきました。

老朽化による退役・更新

現在も事実上の主力火砲とはいえ、すでに開発から半世紀が経ち、開発国のドイツやイギリスでは退役済みです。

陸自への配備開始から数えても、約40年が過ぎているゆえ、古い順に退役させるとともに、19式装輪自走155mm榴弾砲を後継にしました。

しかし、前述のようにFH70は配備数が多く、19式装輪自走砲を一気を調達できない以上、しばらくは使い続けるしかありません。

射撃する自衛隊の火砲射撃するFH70

これには予算の都合だけでなく、組織内の「ポスト」も関係しています。

FH70は8名の操作要員がいるのに対して、後継の19式装輪自走砲では5名に減りました。そして、全体では火砲の定数削減が進み、特科部隊は縮小される見込みです。

もし定数削減に合わせて、FH70を短期間で全面更新したら、新しいポストからあぶれた隊員が続出します。特科部隊だけでも組織としては大きく、やはり人員整理の問題が絡むと、段階的に進めなければなりません。

このような組織特有の事情とともに、ウクライナでは旧式火砲でも役立ち、予備兵器として重要であることから、FH70が完全に姿を消すのはまだ先でしょう。

自衛隊の最新榴弾砲!19式装輪155mm自走砲が秘める性能
軽量化・高機動力を目指して 陸上自衛隊は戦車や歩兵(普通科)のイメージが強いですが、これらを火力支援する特科部隊、いわゆる砲兵も忘れてはな...

コメント

タイトルとURLをコピーしました