独伊瑞の対空ミサイル
ロシアのウクライナ侵攻は予想とは異なり、ウクライナの善戦とロシアの苦戦が目立ち、ロシアは戦局を打開するべく、都市部をミサイル・自爆ドローンで攻撃しています。
これにはウクライナも四苦八苦していますが、西側諸国から「NASAMS」などの防空兵器が届いた結果、都市防空における迎撃率は改善しました。
このような状況のなか、ウクライナがNASAMSと同じく、あるいはそれ以上に待ち望んでいたのが、ドイツの「IRIS-T」シリーズです。
- 基本性能:IRIS-T SLミサイル
全 長 | 2.94m |
直 径 | 152mm |
速 度 | マッハ3 (時速3,600km) |
射 程 | 16〜80km(後述) |
高 度 | 12,000〜30,000m(後述) |
誘導方式 | 慣性誘導 赤外線画像 |
価 格 | 1発あたり約5,500万円 |
この防空兵器は日本語で「アイリスティー」と呼び、ドイツとイタリア、スウェーデンが1990年代に開発しました。ちなみに、本来は地上配備型ではなく、戦闘機向けの短距離の空対空ミサイルです。
赤外線画像で誘導するため、高い命中精度とともに、敵のジャミングに強く、尾部の制御翼で高機動力を実現しました。
これを地対空化させたところ、「IRIS-T SL」というタイプにつながり、「SL」とは地上発射型(Surface Launched)の略です。ただし、同じ「IRIS-T SL」といえども、さらに3つのタイプがあって、以下のように射程が違います。
IRIS-T SLS | IRIS-T SLM | IRIS-T SLX | |
用 途 | 短距離防空 | 中距離防空 | 長距離防空 |
射 程 | 16km | 40km | 80km |
高 度 | 12,000m | 20,000m | 30,000m |
運用開始 | 2015年〜 | 2022年〜 | 開発中 |
短距離から長距離にいたるまで、複数の「IRIS-T SL」がある形ですが、どれも4〜8発を移動発射機に積み、移動式のレーダー、指揮通信車両とともに活動します。
いろんな場所に機動展開しながら、すばやく防空カバーを提供できるほか、展開から準備完了まで約10分しかかかりません。
左端が「SLS」、その右が「SLM」(出典:ドイツ軍)
レーダーは約250kmの捜索範囲を持ち、指揮通信車両は情報処理を行いながら、発射機から最大20kmも離せるため、その生存性を大きく高めました。
ちなみに、移動発射機は短距離型の「SLS」はキャタピラ式、中距離以上の「SLM」「SLX」になると、タイヤ式の大型トラックを使うそうです。
実戦での驚くべき命中率
さて、気になる迎撃能力についてですが、ベースの「IRIS-T」は目標に合わせながら、その動きを微調整できるミサイルです。
この点をふまえると、航空機と巡航ミサイル、ドローンの対処は問題ありません。
実際のところ、ウクライナは最初に中距離型「SLM」をもらい、多くの巡航ミサイルと自爆ドローンを撃墜しました。最終的には「SLM」だけで12個も届き、24個の「SLM(短距離型)」が加わる予定です。
ウクライナ全土の防空には足りないものの、2022年の秋から都市防空戦で役立ち、ウクライナ軍は「100発100中」と称賛しました。
本当の数値は不明ながらも、「IRIS-T」が迎撃率を引き上げたのは疑いなく、入手できる防空手段に限ると、現時点では世界最高峰の性能です。

コメント