日本の自衛隊も持つべき?病院船の役割と意義とは何か

赤十字の絵 アメリカ
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国際法上は保護されるべき対象

古今東西を問わず、戦場では傷病兵の治療を行うための野戦病院が設置されますが、海においては同様の存在である「病院船」が活躍します。

名前のとおり、病院船は傷病兵を治療するために建造されるものですが、当然ながらその能力は船によって異なり、本格的な外科手術が可能な船もあれば、あくまでより医療設備が整った本国や後方拠点に輸送するのが主任務の船もあります。

このように傷病兵を治療・輸送することから病院船は海軍が運用しますが、船自体は民間船をベースにしたものが多いです。

例えば、旧日本軍は陸海軍ともに病院船を保有していましたが、ほとんどが民間商船や貨客船を改造したものでした。余談ですが、横浜の山下公園にある「氷川丸」も戦時中は旧日本海軍の病院船として運用されていたので、戦没や解体を免れた貴重な生き残りです。

白い塗装と大きな赤十字が特徴の病院船「氷川丸」(出典:日本郵船)

ここで病院船で特筆したいのが国際法上は「保護対象」である点。

つまり、敵国の病院船を発見しても攻撃してはいけません。

これは捕虜の取り扱いなど戦争のルールを定めたジュネーブ条約に明記されており、海軍の病院船以外にも赤十字などの救済団体が運用する病院船も保護対象に含まれます。ただし、これらの保護は無条件に適用されるわけではなく、いくつかの条件を満たさねばなりません。

まず、病院船だと分かる標識を示し、傷病兵の治療と輸送を目的としていることが大前提です。そのため、船体は白い塗装を施し、大きな赤十字を描くことで遠くからでも病院船だと認識してもらえるようにします。

さらに、敵国に対して病院船の船名や運航ルートなどを通知することで識別を容易にしたり、事前に攻撃対象から除外してもらいます。

また、非武装が原則なので船内の規律を守るための小銃以外は搭載してはならず、軍事物資や傷病兵ではない兵士の輸送など、医療行為以外の活動は禁止されています。

戦争中でも保護されることから、逆に立場を悪用して人員や武器の輸送に使う可能性は存在し、実際に旧日本陸軍が病院船「橘丸」を軍事利用しようと試みたところ、米軍にバレて拿捕された事例があります。

こうした事情から攻撃自体は禁止されているものの、「臨検」して本当に医療に専念しているかどうかを確認していたケースは多いです。

このように病院船は戦時における傷病兵の治療を想定して建造されますが、平時は機能を維持しながら母港で待機したり、途上国を巡回しながら現地の人々に対する医療支援活動などに従事します。

米海軍の病院船は医療設備が限られた太平洋諸国に展開することが多いですが、こうした医療後進国への巡回診療はアメリカのプレゼンスを示すのみならず、現地との良好な関係を構築する「広報外交」の一環。

太平洋地域には中国も同様の理由で病院船を派遣していることから、病院船を使って現地の心を掴む合戦が繰り広げられているのです。

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