日本の自衛隊も持つべき?病院船の役割と意義とは何か

赤十字の絵 アメリカ
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災害大国・日本にとっての病院船の価値

さて、第二次世界大戦中は日米英を中心に多数運用されていた病院船ですが、アメリカは現在も大型の「マーシー級」2隻を運用している一方、日本の海上自衛隊は病院船を持っていません。

一応、「おおすみ型」輸送艦や空母に改装中の「いずも型」護衛艦は手術室などの医療設備があるものの、病院船と比べるとその能力は限定的であり、これらはあくまで医療機能も備えた艦船なので国際法上の保護対象には当然なりません。

米海軍のマーシー級病院船(出典:アメリカ海軍)

では、日本に病院船は必要なのか?

まず、多数の離島を抱え、頻繁に災害が起こる日本にとって病院船を持つメリットは大きいです。東日本大震災でも「ひゅうが型」護衛艦が被災者の入浴や医療支援を行う拠点として機能しましたが、病院船があればもっと本格的な医療活動が行えたはずです。

そして、新型コロナウイルスのような疫病についても、初期段階における水際対策や病院の負担軽減に貢献できます。まだ記憶に新しい2020年のダイヤモンドプリンセス号のコロナ対応の際に、病院船があれば洋上でそのまま隔離しながら治療できたとする意見がありました。

また、アメリカはコロナ流行時に大都市部に病院船を派遣して患者を洋上隔離しながら治療しましたが、これによって一般病院の病床に少し余裕ができたそうです。

東日本大震災で限定的な病院船として活躍した「ひゅうが」(出典:海上自衛隊)

こうしたことも踏まえて、日本政府も病院船の導入を検討し始めており、2021年には病院船の整備を進める「病院船推進法」が成立しました。これはあくまで推進本部を立ち上げて整備推進計画の策定を行うための法律で、病院船の導入が決まったわけではありません。

筆者としては、いずれ発生する南海トラフ巨大地震や首都直下型地震では未曾有の被害によってインフラも寸断されるため、こうしたインフラに頼らない自己完結能力を持ち、長期間活動できる病院船は必要と考えます。

1隻あたりの建造費は約350億円と見積もられますが、大規模災害の時に数多の生命を救える重要拠点になり得ることを考えると、決して無駄使いではありません。

しかしながら、病院船は必要と考える反面、慢性的な人手不足に苦しむ海上自衛隊が病院船を運用する余裕があるかどうかは別問題。病院船を導入した場合、最低でも2隻は建造せねばならず、今の海自にそこまでの余力があるとは思えません。

したがって、病院船を建造する前に自衛隊員を十分確保して海自の人手不足を解消するのが先でしょう。政府もこの問題点は認識しているため、当面は病院船を建造せずに「いずも型」護衛艦や「ちよだ 型」潜水艦救難艦など一定の医療設備を持つ艦艇を活用する方針です。

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