変態すぎる対空ミサイル
ミサイル技術の進化にともない、さまざまな革新的兵器が生まれてきましたが、アメリカでは先端部が変形して「曲がる」ミサイルが登場しました。
あまりに斬新すぎるこの新兵器は、空戦での撃墜成功率を高めるべく、アメリカの空軍研究所が開発したものです。
迎撃直前に先端部を曲げながら、弾頭の威力を目標に対して向かわせます。ミサイルの機動性が高まるなか、直前での迎撃回避を防ぎ、確実に仕留めるのが狙いです。
開発計画は「Missile Utility Transformation via Articulated Nose Technology(可変先端部によるミサイル技術の革新)」という名を持ち、その頭文字から「ミュータント計画」と呼ばれてきました。
この変態的なミサイルにはふさわしく、さすがは略称のセンスに長けたアメリカです。
新概念の飛行制御
構想自体は1950年代からあったものの、中核となる関節型の飛行制御システムができず、最近になってようやく実用化されました。
F-35B戦闘機が垂直着陸するとき、エンジン・ノズルの部分が可動しますが、ミュータントの動きも似たイメージです。
関節型システムには「アクティブ・モーフィング」を使い、飛行中の各段階に合わせながら、変形や微調整を行う新技術を取り入れました。また、可変部分は柔軟性の確保のみならず、空気摩擦の高熱にも耐えるべく、新開発の素材を採用しました。
ちなみに、アクティブ・モーフィング技術を翼部分に応用すれば、変化する空気抵抗に合わせて微調整を行い、最適な飛行性能をもたらすと期待されています。
この変形技術を使えば、従来の「フィン(小翼)」に頼らずとも、その機動性を保つことができるほか、射程距離も延ばせる見込みです。しかも、先端を常に目標に向けられるため、捕捉・誘導するときに有利とされています。
いまのところ、地上での技術試験まで済んでおり、ヘルファイア・ミサイルの改良型に試験採用される予定です。そして、将来的には航空優勢を確保すべく、第6世代ステルス戦闘機での運用を目指すと思われます。
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