戦場を駆ける高機動火力
米軍が愛用する四輪駆動の「ハンヴィー」は、頑丈で汎用性に優れているため、対戦車ミサイルや対空ミサイルを載せたタイプも作られてきました。
こうした派生型があるなか、ひときわ火力面で目立つのが、荷台に榴弾砲を載せた「2CTホークアイ」です。
- 基本性能:2-CTホークアイ
重 量 | 6.4t |
全 長 | 4.6m |
全 幅 | 2.16m |
全 高 | 1.8m |
乗 員 | 4名 |
速 度 | 時速100km |
行動距離 | 約500km |
兵 装 | 105mm榴弾砲 |
価 格 | 不明 |
ホークアイは2022年には性能試験を行い、短時間での展開と射撃、陣地変換という機動性のよさをアピールしました。これは高機動なハンヴィーの強みを活かしたもので、撃ってすぐに移動する「シュート・アンド・スクート戦術」には最適です。
ただし、その口径は通常の155mmではなく、より小型の105mmになりました。ハンヴィーを使う以上、155mm砲はとても載せられませんが、105mm砲でも車両や陣地を余裕で吹き飛ばせます。
火砲システムとして、自走砲と弾薬をそれぞれ載せた2両から成り、運用要員は4名で済みます。米軍の主力自走砲「M109」が6名、けん引式のM777榴弾砲が5名いることを考えると、かなりの少人数で運用可能です。
その秘訣はデジタル化された射撃管制システムにあり、射撃手順を大きく簡略化しながら、リアルタイムで情報共有を受けられます。これにより、省人化を実現したのみならず、3分以内に展開して2発を撃ったあと、撤収完了までできるようになりました。
ウクライナでのホークアイ(出典:ウクライナ軍)
この辺りは「HIMARS高機動ロケット」に似ていますが、さっそく試験運用も兼ねてウクライナに送られたところ、その神出鬼没ぶりを発揮しました。
他の自走砲や戦車と比べて、ハンヴィーは悪路や狭い場所にも強く、森林地帯などに展開しやすいと評判です。上空から身を隠せる森林地帯に潜み、ロシア軍に射撃する様子も確認されています。
新旧技術による反動抑制
2CTホークアイは小型・高機動が「セールスポイント」ですが、その重量はわずか6.4トンしかなく、普通ならば砲の反動で車体がひっくり返りそうなものです。
では、どうやって反動を抑えているのか?
じつは最大60%も抑えられる新技術「SRT」を使い、榴弾砲の仕組みも前進砲というタイプにしました。
少し説明すると、射撃時の反動を抑えるべく、火砲には砲身を後ろに下がらせる駐退機というのがついています。通常は下がった砲身を元に戻す復座機とセットで須賀、前進砲ではこの仕組みが逆になります。
前進砲は駐退機が下がった状態から始まり、復座機が砲身を前に押したときに発射します。この砲身が前進する際の運動エネルギーを使い、射撃時の反動を相殺するわけです(ただし、全部ではなく一部)。
この仕組みを使えば、搭載車両を軽くできるものの、不発や射撃のタイミングにズレがあると失敗しやすく、運用リスクを考えてあまり普及しませんでした。
しかし、技術が進歩した現在は信頼性が高まり、2CTホークアイにも導入して、軽量化と火力を両立させました。
試験中の2CTホークアイ(出典:アメリカ軍)
新旧技術でハンヴィーを自走砲化できたわけですが、これは通常の自走砲より燃費と行動距離で有利なほか、メンテナンスも楽になりました。
なぜなら、部品数が減ったことに加えて、どの現場にもハンヴィーはあるからです。馴染みある車両を使えば、その扱いを熟知している兵士が多く、部品も調達しやすくなります。
互換性も高めた形ですが、まだ本格運用はされておらず、前述のウクライナにおける実戦経験に基づき、さらなるアップデートを図るのでしょう。
ただし、同じ105mm砲を載せた「ストライカーMGS」に代わり、ストライカー部隊の機動火砲として配備される予定です。
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