戦場を駆ける高機動火力
「ハンヴィー」は米軍の四輪駆動の車両ですが、頑丈で汎用性に優れているゆえ、対戦車・対空ミサイルを載せるなど、いろんなタイプが作られてきました。
多くの派生型があるなか、「2CTホークアイ」は火力の強さで目立ち、なんと荷台に榴弾砲を搭載しました。
- 基本性能:2-CT ホークアイ
重 量 | 6.4t |
全 長 | 4.6m |
全 幅 | 2.16m |
全 高 | 1.8m |
乗 員 | 4名 |
速 度 | 時速100km |
行動距離 | 約500km |
兵 装 | 105mm榴弾砲 |
価 格 | 不明 |
ホークアイは荷台に105mm榴弾砲を積み、ハンヴィーの高機動力を活かしながら、短時間での展開と射撃、陣地変換を行う自走砲です。これは何発か撃ったあと、すぐ移動する「シュート・アンド・スクート戦術」には向き、現代砲兵戦に適した装備といえます。
ただ、ハンヴィーを使う以上、通常の155mm砲はとても搭載できず、より小型の105mm砲になりました。それでも、車両や陣地は余裕で吹き飛び、火力支援としては十分です。
運用時は弾薬運搬用のハンヴィーが加わり、計2両(要員は4名)で火力システムを組みます。米軍の主力自走砲「M109」が6名、けん引式のM777が5名である点を考える、少人数での運用を可能にしました。
その秘訣は射撃管制システムにあって、デジタル化で手順を簡略化しながら、リアルタイムで情報共有を行えます。その結果、省人化だけではなく、3分以内に展開して2発を放ち、撤収まで完了できるようになりました。
ウクライナでのホークアイ(出典:ウクライナ軍)
このあたりは「HIMARS高機動ロケット」に似ていますが、さっそく試験運用を兼ねてウクライナに送ったところ、同じような神出鬼没ぶりを発揮しました。
他の自走砲や戦車と比べて、ハンヴィーは悪路や狭い場所に強く、森林地帯で使いやすいと評判です。上空から身を隠せる森林地帯に潜み、ロシア軍を攻撃する様子が確認されています。
新旧技術による反動抑制
小型・高機動の「セールスポイント」のとおり、2CTの重量は6.4トンしかなく、普通は砲の反動でひっくり返りそうなものです。
では、どうやって反動を抑えているのか?
少し説明すると、最大60%も抑える新技術「SRT」を使い、榴弾砲の仕組みを前進砲というタイプにしました。
射撃時の反動を抑えるべく、あらゆる火砲には駐退機が付いており、砲身を後ろに下がらせます。通常は復座機とセットで組み込み、下がった砲身を元に戻しますが、前進砲ではこの仕組みが逆になります。
前進砲は駐退機が下がった状態で始まり、復座機が砲身を前に押したときに発射します。この砲身の前進時の運動エネルギーを使い、射撃時の反動を相殺する形です(全部ではなく、一部だが)。
この仕組みを使えば、搭載車両を軽くできるものの、不発や射撃のタイミングがズレると失敗しやすく、その運用リスクからあまり普及しませんでした。
しかし、現在は技術進歩で信頼性が高まり、2CTでは軽量化と火力を両立させました。
試験中の2CTホークアイ(出典:アメリカ軍)
新旧技術の組み合わせにより、ハンヴィーを自走砲化したわけですが、通常の自走砲より燃費と行動距離で有利なほか、メンテナンスも楽になりました。
なぜなら、ハンヴィーは自走砲より部品数が少なく、どの現場にもあるからです。馴染みのある車両を使えば、扱いを熟知している者が多く、交換部品も調達しやすくなります。
互換性・整備性を高めたとはいえ、いまだ本格運用はされておらず、前述のウクライナでの実戦経験に基づき、さらなるアップデートを図るはずです。
そして、同じ105mm砲の「ストライカーMGS」に代わり、ストライカー部隊の機動火砲として配備予定です。
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