準同盟化?深まる日本とフィリピンの安全保障関係

日本とフィリピンの国旗 外交・安全保障
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安全保障で急接近

フィリピンは日本の隣国であるほか、悲しい過去を乗り越えながら、戦後は友好関係を築いてきました。

従来は経済面での結びつきが強く、軍事面は人道支援などに限られていたものの、最近は頻繁に共同訓練を実施したり、装備品を供与するようになりました。

その裏には「中国」の存在があります。

フィリピンは南シナ海で中国と対立しており、対中国で似た立場の日本に接近したわけです。

フィリピン側の働きかけは訓練にとどまらず、自衛隊の一時展開を視野に入れるなど、かなり「前のめり」な姿勢です。日本は海上自衛隊のP-3C哨戒機、航空自衛隊のF-15J戦闘機を訓練目的で送り込み、共同訓練時の手続きを簡略化するべく、円滑化協定を締結しました。

この円滑化協定はオーストラリア・イギリスに続き、フィリピンと「準同盟」になったことを意味します。

日本製巡視船の視察(出典:首相官邸)

この準同盟は安全保障だけではなく、歴史的にも大きな意味を持ちます。

太平洋戦争をふり返ると、フィリピンは日米両軍の戦場になり、人口の7%にあたる110万人以上を失いました。ここに旧日本軍の戦争犯罪が加わり、戦後は対日感情が極めて悪く、東京裁判では対日強硬派でした。

その後、経済・文化交流を通した努力とともに、対中国の警戒感が高まるにつれて、いまや準同盟国になるまで改善しました。

かつての被害者と加害者と手を結び、悲劇的な過去を乗り越えながら、現在進行形の脅威に対処する。それが与える影響は計り知れず、似たような過去を持ち、同じ脅威に直面する国にとって、新たな選択肢をもたらします。

両国にとってはWin-Win

では、日比の準同盟化は何を意味するのか?

まず、フィリピン側は軍事力で劣る以上、装備の近代化とともに、軍の能力向上を期待できます。

すでに日本から防空レーダーを買い、新しい巡視船を供与されるなど、戦力を増強してきました。

さらに、フィリピンはアメリカの同盟国であって、かつて撤退した米軍を再展開させているため、日本の動きはこれを補完する形です。自衛隊駐留の可能性は低いとはいえ、訓練名目での派遣は常態化すれば、日米比の連携は飛躍的に向上します。

フィリピンの優先課題といえば、南シナ海における権益を中国から守り、自国の領土・海域を防衛すること。しかし、フィリピンは台湾のすぐ南に位置するほか、要衝のバシー海峡に面しています。

したがって、台湾有事は必ずフィリピンを巻き込み、最近はその認識を持ち始めました。少なくとも、台湾有事が決して他人事ではなく、自分も当事者であると理解しています。

海自とフィリピン海軍の共同訓練(出典:海上自衛隊)

一方、日本はシーレーン保護と台湾有事を考えたとき、フィリピンは戦略的に極めて重要です。

現在、日米が西太平洋で対中国戦略を進めるなか、沖縄〜台湾〜フィリピンはその最前線にあたり、フィリピンとの連携は欠かせません。

したがって、日比両国の動きは「Win-Win」であって、共通の同盟国・アメリカを巻き込みながら、対中抑止における外交・安全保障戦略の一環です。

中国の戦略的ミス

当然、日比の急接近に中国はいら立ち、不快感を表してきました。

されど、これは南シナ海への進出を強引に進めたり、フィリピンを威圧してきた結果にすぎず、中国のオウンゴールと言うしかありません。

もし中国が恫喝的な態度ではなく、南シナ海の共同開発を提案するなど、善隣外交に徹していれば、違う光景になっていたはずです。

フィリピンは1990年代に米軍を追い出しており、そこを中国が友好的な姿勢でつけ込めば、フィリピンを日米から引き離したり、中国との準同盟すらあり得たでしょう。

その場合、中国による西太平洋への進出、台湾侵攻のハードルが下がり、より好都合な戦略環境を作れました。

ところが、中国は真逆のアプローチを行い、フィリピンの抗戦意志とともに、同国の対日感情を見誤りました。

たしかに、日本はフィリピンを占領下に置き、米軍との激戦に巻き込んだあげく、甚大な被害をもたらしました。旧日本軍の圧政もひどく、少なくない戦争犯罪も起きました。

ですが、たとえ過去を巡る問題があっても、普通は目前に迫る脅威を優先します。

他方、中国は「歴史カード」を過大評価していました。

これが過去の日本の行為ではなく、現在の中国を警戒する国と認識の差を生み、中国側に不利な状況を作り出しました。

「昨日の友は今日の敵」の言葉が示すとおり、国際関係には永遠の敵や友人はおらず、あるのは冷徹な国益だけです。この単純明快な理論に基づけば、フィリピンは80年前の日本の所業よりも、いまの中国の横暴を問題視します。

以前から歴史カードを切ってきた中国ですが、その効果が年々薄れているにもかかわらず、いまだに有効性を過信しているようです。

しかも、その歴史の皮肉というべきか、先ほどの対中防衛線を見ると、太平洋戦争で日本がアメリカに試みたものを、今度は日米が中国に逆用した形です。

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