有事は近いのか?備えを急ぐ日本政府の動きから読み取る

防衛省の正門 外交・安全保障
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「焦り」がうかがえる動きの数々

中国の軍備増強、北朝鮮の核開発、ロシアによるウクライナ侵攻。

安全保障環境が戦後最悪を常に更新するなか、ここ数年で「台湾有事」という言葉が社会全体に浸透しました。確かに、中国は台湾侵攻を見据えた軍事力強化を図り、有事の可能性も高まっています。

ただし、台湾有事そのものは昔から指摘されていて、専門家の一部はずっと警鐘を鳴らしてきました。こうした警告に対して日本政府の動きは鈍く、社会的関心も大きくはなかったのですが、ここにきて有事への備えが急加速しています。

それは、ここ1〜2年の岸田政権下の動きだけでもご覧のとおり。

  • 防衛費の倍増
  • 自衛隊の大規模な組織改編
  • 長距離ミサイルの導入(敵地攻撃能力の獲得)
  • 自衛隊による輸血用血液の生産
  • 弾薬不足の解消に向けた国営工場の建設
  • 食糧確保に向けた法整備(増産や価格統制)
  • 民間商社に対する食糧輸入計画の策定要請
  • 南西方面を中心とした空港・港湾施設の拡充
  • 米海軍艦艇の日本での定期補修
  • 避難シェルターの整備構想
  • 武器輸出規制の緩和
  • 空自の豪州へのローテーション展開

まるで今までサボってきた分を急いで取り戻すかのような勢いですが、輸血用血液や弾薬、食糧の確保は明らかに「戦時体制」を意識しており、豪州へのローテーション展開も奇襲からの全滅を避ける「戦力退避」の一環と思われます。

長距離ミサイルも国産ミサイルの開発を早めるとともに、購入するトマホーク巡航ミサイルの半数を「型落ち」に変更してまで調達を前倒しました。

特にトマホークは「1年」の納期前倒しとなります、果たしてそこまでしなければならないほど、事態が切迫しているのでしょうか。

社会的反応が示す事態悪化

さらに、こうした数々の動きに対して、マスコミと世間の反対がそこまで大きくないのも事態の深刻さを示しています。

例えば、安倍政権による安保法制の策定では、あれだけマスコミと左派陣営の反対論が盛り上がったにもかかわらず、最近の動きを巡っては反応が鈍いようです(もちろん反対論やデモはあるが、2015年の比ではない)。

今までならば、必ず「戦争を煽るな」「戦争をできる国になる」という強烈な反対キャンペーンが展開されるのに、今回はマスコミも足を引っ張ろうとせず、岸田政権の決定がどんどん進んでいきます。

つまり、そんな余裕がないほど情勢が風雲急を告げており、2015年と違って「戦争」を巡る大前提が崩れたことで、もはや「幻想」に基づく反対論は通用しなくなりました。

これはロシア=ウクライナ戦争が、温室育ちの日本人に国際社会の冷たい現実を見せつけた結果です。

同戦争によって現代でも国家間戦争が起きうることが証明され、軍事抑止力を否定して「対話」「平和精神」を頼みの綱とするような主張は、その説得力を大きく失いました。

その証拠に従来これらを唱えてきた勢力は主張を若干変えており、いままで憲法9条は戦争自体を防ぐような言説だったのに対して、現在は「日本が自ら戦争をするのを縛る」というニュアンスになりました。

とはいえ、こうした主張もありのままの「現実」を見せつけられた大多数の国民にはさほど響かないでしょう。なぜならば、左派が唱える主張の多くは、日中戦争や太平洋戦争のように日本が自ら攻めに行くのを前提としているから。

しかし、現代を生きる国民にとって、戦争(有事)というのはこちらから積極的に仕掛けるものではなく、あくまで向こうからやってくるもの。

この認識の乖離がもたらす影響は大きく、もはや問題は否が応でもやってくる可能性が高い有事にどう備え、どう対処するのかという点です。

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