ドイツのプーマ装甲歩兵戦闘車が抱える欠陥とは?

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マルダーの後継者として

冷戦期の西ドイツといえば、他の西側諸国に先駆けて「歩兵戦闘車」を作り、対ソ連の最前線としてその発展に力を入れました。

有名なのがいまも使われている「マルダー」ですが、その後継として開発されたのが、最近なにかと話題になる「プーマ」です。

  • 基本性能:プーマ歩兵戦闘車
重 量 41t
全 長 7.4m
全 幅 3.7m
全 高 3.1m
乗 員 3名+同乗6名
速 度 時速70km
行動距離 約600km(整地)
兵 装 30mm機関砲×1
5.56mm機関銃×1
対戦車ミサイル×2
価 格 1両あたり約12億円

もともと、プーマは1980年代に開発が始まり、1989年には最初の試作車が完成していました。

ところが、冷戦終結とソ連崩壊を受けて、新しい歩兵戦闘車の必要性が薄くなり、ドイツは旧式のマルダーを改良しながら使うことにしました。これには世界的な軍縮機運とともに、東西統一後の財政事情が悪かったのも関係しています。

その後、対テロ戦で歩兵戦闘車の価値が再び高まり、老朽化したマルダーを置き換えるべく、2002年にプーマの開発が再始動しました。ただ、試作車両からすでに10年以上が経っていたため、ほとんど再設計に近い形でスタートします。

そして、2015年から本格配備が始まって、計350両のプーマを部隊配備しました。

火力、防御力は問題なし

次に、プーマの具体的な性能について。

まず、メイン武装の30mm機関砲ですが、これは毎分700発の発射速度と最大3,000mの射程距離を誇り、装甲・非装甲車両のそれぞれに適した弾薬を備えました。このうち、装甲向けの「APFSDS弾」は旧式戦車ぐらいは貫けるとされています。

対する非装甲用の「KETF弾」は、時限式の信管を持ち、計135個ものタングステン弾を内蔵した散弾タイプです。

二重装填システムを使えば、これら弾薬を交互に射撃できるものの、あらかじめ装填されているのは200発にすぎず、予備弾も200発しか収納されていません。そのため、全力射撃すれば、あっという間に撃ちつくしてしまいます。

驚くことに、プーマの砲塔は完全無人化されており、乗組員は射撃用のサイト(照準鏡)、光学カメラ、赤外線画像カメラ、レーザー測距器を使いながら遠隔操作する仕組みです。

このとき、複数の目標を捉えられる射撃管制装置が、その脅威度に基づいて優先順位をつけたあと、その情報をモニターに映し出します。つまり、攻撃プロセスのデジタル化・自動化も大きな特徴のひとつです。

プーマ歩兵戦闘車(出典:ドイツ連邦軍)

一方、海外派遣を見据えたプーマの防御力は、その状況に応じながら追加強化できる設計です。よって、その防護力にはレベルA・レベルCの2つがあって、空輸時には前者の状態で運び、現地到着後はレベルCに強化する感じです。

レベルA状態でも、正面装甲で30mm弾、車体側面でも14.5mm弾に耐えられますが、レベルCではRPG弾の直撃に耐えたり、弱点の車体上部を保護できます(その分だけ重量はかさむが)。

ちなみに、鉄道輸送向けのレベルBもあったのですが、レベルCでも鉄道で問題なく運べるため、こちらは最終的に廃止されました。

笑えない整備不良

このようなスペックを誇る一方、2022年の演習では参加した18両のプーマが全て不具合を起こして「欠陥品」と批判されました。しかも、これらはソフトフェアが突然ダウンする問題を乗り越えたばかりの改良タイプでした。

ところが、よくよく調べてみると、この演習でのトラブルは構造的欠陥ではなく、メンテナンス不良によるものだったのです。

どういうことかと言うと、派遣先の部隊がこの改良バージョンの整備に慣れておらず、労働時間の厳守からメンテナンスをおろそかにしたのが原因でした。労働規則を重視するドイツらしい失態とはいえ、陸軍のお粗末ぶりが浮き彫りになりました。

幸いにも、根本的な欠陥ではなく、それを証明するかのように2023年にも50両が追加注文されました。

いまのところ、ドイツ以外で採用国はなく、将来的な見通しは不透明ながらも、今後も歩兵戦闘車の需要は増えるはずです。

ウクライナで大規模地上戦が行われるなか、同国に旧式マルダーを渡しているのを考えれば、戦況次第ではプーマもさらに生産数を増やすかもしれません。

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