大火力と十分な防御力
ウクライナ侵攻で装甲戦力の重要性が高まるなか、生産力を減らしていた欧米諸国に代わり、韓国の軍事装備品・生産能力が注目されています。北朝鮮と対峙する以上、常に陸軍戦力を整えざるをえず、結果的に「K2戦車」ような国産開発につながりました。
これら韓国兵器は求めやすい値段、西側に劣らない性能、柔軟なサポート体制などにより、いまや外国勢に多く買われています。
特にK2戦車やK9自走砲が人気とはいえ、地上戦に欠かせない歩兵戦闘車も忘れてはならず、それが「K21」というものです。
- 基本性能:K21歩兵戦闘車
重 量 | 25.6t |
全 長 | 6.9m |
全 幅 | 3.4m |
全 高 | 2.6m |
乗 員 | 3名+同乗9名 |
速 度 | 整 地:時速70km 不整地:時速40km 水 上:時速7km |
行動距離 | 約500km |
兵 装 | 40mm機関砲×1 7.62mm機関銃×1 対戦車ミサイル×2 |
価 格 | 1両あたり約5億円 |
K21は北朝鮮軍に対抗すべく、1999年に開発が始まり、2013年に配備開始となった韓国の最新歩兵戦闘車です。
まず、主武装には40mm機関砲を持ち、毎分300発の発射速度とともに、約1km先の200mm装甲まで貫ける大火力を確保しました。
口径の大きさだけならば、アメリカのM2ブラッドレー(25mm砲)はもちろん、日本の89式装甲戦闘車(35mm砲)も上回り、味方に対して圧倒的な支援火力をもたらします。
強力な40mm砲を持つK21(出典:韓国陸軍)
ここに最新の射撃管制システムを組み込み、最大6km先の目標を見つけたあと、3kmの距離で識別可能になりました。もし射撃手が敵を見失っても、車長の方で独自に追跡・攻撃できるほか、リアルタイム通信で味方と連携しながら戦えます。
このとき、弾道や衝撃の度合いをコントロールすべく、弾薬の信管にデータを入力します。そのおかげで、あらゆる目標への対応範囲が広がり、対空射撃や移動目標への精密射撃もできます。
国産の対戦車ミサイルと合わせれば、その攻撃力は装甲戦力を撃破するのに申し分ありません。
射撃するK21(出典:韓国陸軍)
一方、その車体にアルミ合金や強化繊維を使い、M2ブラッドレーよりも軽く、高機動になりました。その分、懸念されるのが防御力の低下ですが、新しい複合装甲により、車体前面は30mm弾の直撃まで、側面ならば14.5mm弾まで耐えられます。
ほかにも、NBC兵器(放射能・生物・化学)に対する防護システム、自動消火装置、燃料タンクの防火性能が整備されました。
今後はアクティブ防御に向けた改修キットにより、迫りくるミサイルや敵弾を検知・迎撃するシステムを導入予定です。
定員の多さと高い機動性
ところで、歩兵戦闘車である以上、兵士を戦場まで運ぶのが務めですが、K21はこの点でも優れています。
他の西側車両が定員6〜7名であるのに対して、K21では最大9名まで載せられるうえ、車内にいながらスクリーンで外の状況を確認できます。
K21から降りる兵士たち(出典:韓国陸軍)
定員の多さに加えて、軽量化にともなう高い機動性を持ち、戦車に同行しながら兵士を運ぶ「戦場タクシー」としては十分です。また、河川などをそのまま横断すべく、車体側面には浮力をもたらすエアバッグが設けられました。
しかしながら、2009年には渡河演習で浸水する事故が起き、翌年も似たケースで車両が沈没、乗員が死亡する事態となりました。
調査の結果、これら浸水事故は浮力と強度が足りず、排水ポンプが機能不全に陥る設計上の問題でした。その後、これらは改修されたものの、別件であるセンサーの不具合や納入業者の偽装と合わせて、韓国における兵器開発の難しさを浮き彫りにしました。
オーストラリアへの輸出
トラブルはありながらも、K21は主力歩兵戦闘車として550両以上が配備されていて、「K21-105」という105mm砲を載せた軽戦車タイプも作られました。
さらに、いつもの柔軟な営業体制が実を結び、オーストラリア向けに120両以上が輸出されます。K2戦車などを爆買いしたポーランドには売れなかったものの、ラトビアやルーマニアが関心を寄せるなど、対露準備を焦る欧州勢にはまだ輸出チャンスがありそうです。
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