厄介なトルコ産兵器
もはや現代戦には無人攻撃機が欠かせず、その性能や運用方法が戦局にも大きな影響を与えます。
その一例といえるのが、2020年のナゴルノ=カラバフ戦争ですが、ここではアゼルバイジャンが無人機を大量に飛ばして、アルメニア軍の陣地や装甲戦力を破壊しました。
アゼルバイジャン軍は旧式機を無人改造したり、徘徊型の自爆ドローンを投入するなか、トルコから購入した「バイラクタルTB2」も大活躍しました。
これは中高度空域(5,500~9,000m)を飛び、長時間滞空できる大型無人機ですが、ロシア=ウクライナ戦争でも戦果をあげており、いまや代表的な無人攻撃機となりました。
- 基本性能:バイラクタルTB2
| 重 量 | 650kg |
| 全 長 | 6.5m |
| 全 幅 | 12m |
| 速 度 | 時速220km |
| 飛行時間 | 27時間 |
| 高 度 | 8,200m |
| 兵 装 | 対地ミサイル、誘導爆弾、ロケット弾 |
| 価 格 | 1機あたり約6億円 |
バイラクタルは2014年に初飛行したあと、トルコやカタール、アゼルバイジャンで導入されました。軽い複合炭素繊維の胴体を持ち、燃料の自動調整機能によって効率的な飛行を実現しました。
地上管制は移動式のステーションで行い、パイロットやオペレーターが画面を確認しながら、遠隔操作で指揮・制御します。敵の攻撃や妨害に耐えるべく、これら地上支援機能は冗長性を持ち、無人機の飛行制御システムも三重に張り巡らせました。
飛行中は各センサーから情報を得たあと、アルゴリズム機能で処理しながら、その制御システムに反映する仕組みです。基本的には遠隔操作しますが、離陸から着陸まで自律飛行できるため、たとえGPSなどの通信機能が失われても、自動着陸できるようになっています。
気になる武装については、ミサイルや誘導爆弾、ロケット弾などを積み、中高度からの精密攻撃が可能です。搭載兵器で異なるものの、大型の対戦車ミサイルを使えば、その射程は最大30〜40km以上になります。
こうした無人攻撃機は被撃墜を織り込み、上空から常に攻撃の機会をうかがうため、狙われる側としては厄介な存在です。
相手の防空能力次第
無人攻撃機としては比較的安いですが、それでも約5〜6億円のコストがかかり、決して気軽に大量投入できません。
その値段は巡航ミサイルより高く、目標周辺を徘徊しながら、攻撃機会を狙えるとはいえ、飛行速度が遅いことから、わりと簡単に撃墜できます。
たしかに、前述のナゴルノ=カラバフ戦争では活躍しましたが、これは事前に相手の防空網を制圧できたからです。このとき、地対空ミサイルの抑止効果が働き、アルメニア軍は戦闘機をあまり使っていません。
逆にアゼルバイジャン軍は自爆ドローンを使い、アルメニア側の防空網を破壊したあと、バイラクタルで陣地や戦車を狙いました。
一方、ウクライナもバイラクタルを使い、ロシア軍の装甲車両や陣地、水上艦艇に損害を与えてきました。たとえば、巡洋艦「モスクワ」の撃沈において、2機のバイラクタルが攻撃を行い、その隙にネプチューン対艦ミサイルを命中させました。
ただし、こうした戦果は多少の誇張を含み、電波妨害で使用不能になったり、地対空ミサイルに撃墜された機も多いです。ロシア=ウクライナ戦争をふまえると、序盤こそ通用したものの、対策を講じられてからは戦果があがらず、結局は敵の防空網が生きている限り、その行動は大きく制限されます。
この場合、あくまで相手のスキを狙ったり、陽動作戦で使うなど、限定的な使用にならざるをえません。
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