中露は同床異夢の軍事同盟?中国とロシアの協力関係ついて

中国とロシアの国旗 外国
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立場が完全逆転

ロシアと中国は以前から協力関係にありましたが、アメリカなどの自由主義陣営(いわゆる「西側」)に対抗すべく、現在は「中露同盟」が懸念されるほどになりました。

もともと同じ権威主義体制を共有するうえ、あまり利害が衝突しないことから、互いに何かと好都合なパートナーでした。

それがウクライナ侵攻により、ロシア側が中国への急接近を図り、いまや戦略的パートナーとして連帯しています。

しかし、それは対等な関係ではなく、ウクライナで苦戦中のロシアが中国に頼っている構図です。ウクライナ侵攻が西側との関係破綻を招き、泥沼の戦争で疲弊するなか、もはやロシアは中国抜きでは成り立ちません。

中露首脳会談もはや対等な立場にあらず

そんなロシアに対して、中国はその足元を見つつも、重要な支援をしてきました。経済制裁の抜け穴を用意したり、貴重な軍需物資を送るなど、友好国以上、同盟国未満の役割を果たしています。

その見返りとして、天然ガスなどの資源を安く買いたたき、中国製品を大量に送り込むなど、Win-Winの関係性を築きました。

ただし、中国製品に頼るロシアとは違って、中国は別にロシア抜きでも問題はなく、損耗著しいロシア軍に対して、中国軍は絶賛増強中です。

表向きの対等関係とは異なり、両者の立場は完全に逆転しており、その実情を認めないのはロシアぐらいでしょう。

すなわち、ロシアは中国のジュニア・パートナーに成り下がり、従属関係とまではいかないものの、足元を見られる立場になりました。

このまま依存度が高まれば、経済的な植民地になりかねません。

むしろ、中国側の一部はそれをもくろみ、ロシアの戦争継続を後押ししながら、ひたすら実利をしぼり取ったり、中国の戦略的立場を強化する狙いが透けて見えます。

ロシアは「大きな北朝鮮」と揶揄されていますが、核の恫喝に頼りながら、中国への経済依存が強い点では、わりと的を得ているかもしれません。

協力以上、同盟未満

では、このまま同盟関係まで進むのでしょうか?

まず、ウクライナで消耗戦を続く以上、ロシアは中国の協力が欠かせず、少なくとも中国からの武器・弾薬、物資は必要です。

「生産<消耗」という状況に陥り、在庫も尽きつつあるなか、ますます中国依存が進み、本音では直々の援軍がほしいぐらいでしょう。なにせよ、北朝鮮に兵士や砲弾を頼っているぐらいですから。

一方、極東ロシアへの影響を考えれば、中国の巨大な経済力、人口、軍事力は脅威です。

極東ロシアの人口は約800万に過ぎず、中国は隣接する東北部だけで1億人を超えます。中国側がその気になれば、極東ロシアは飲み込まれてしまいます。

そんな相手への依存は避けるべきですが、ウクライナ侵攻という泥沼戦争で苦しむ限り、背に腹は代えられません。

では、中国側からロシアを見た場合はどうか?

中国視点で考えれば、ロシアはNATOを欧州方面に拘束しているほか、アメリカにも適度な脅威を与えてくれる存在です。

しかも、中央アジアぐらいしか関心エリアが被らず、あまり利害の衝突はありません。ロシアは欧州方面、中国は太平洋方面、という具合に住み分けており、互いに後背を任せているような形です。

中露共同演習日本海での中露軍事演習

だからと言って、これが軍事同盟になるとは限らず、むしろ正式な同盟を組むほどのメリットはありません。実際の同盟となれば、表立った支援をせねばならず、そこには派兵義務も入ってきます。

ところが、先述のように中露の関心エリアはあまり被っておらず、派兵するほどのインセンティブはありません。モスクワから見た台湾有事、北京から見たロシア=ウクライナ戦争は、まさに「地球の裏側」で起きている出来事なのです。

ロシアが台湾侵攻に手を貸したり、ウクライナ戦線に中国軍を送るなど、お互いの領域に深入りする理由はなく、実際に必要なのは経済・軍事支援です。

言いかえれば、いまの中露両国は正式な同盟を組むほど、互いの利害が一致していません(特に中国側は)。

正式な軍事同盟を組めば、ロシアがNATOの敵である以上、中国も欧州各国と敵対せねばならず、外交上の選択肢が狭くなります。一方、あえて同盟未満にとどめておけば、欧州との関係は維持できるうえ、仲介者としてふるまえるなど、国際関係上はなにかと好都合です。

現状をふまえると、ロシアは中国の援軍がほしいところですが、これもその場しのぎの手段に過ぎず、彼らも極東ロシアにのしかかる中国の圧を感じています。だからこそ、ロシアは中国をあまり刺激せず、極東方面の安定を確保したいのが本音です。

結局、中露両国は連携こそすれども、それは「支援+α」にとどまり、義務が発生する同盟までは発展できません。

現在の軍事連携についても、日米のような指揮・統制のすり合わせはもちろん、共同訓練の頻度やレベルを考えると、日豪のような準同盟にも一歩足りない感じです。

さらなる関係深化の動きはあれども、日豪ほど国益や方向性は一致しておらず、限定的なものになるでしょう。歴史的にいえば、かつての「三国協商」ような実態になり、「協力はするけど、確約はしない」という緩やかなものになると思われます。

さはさりながら、中露の軍事連携が前進するのは変わらず、日本にとっては脅威ですが。

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