まずは310機をお試し購入
ロシア=ウクライナ戦争で自爆ドローンが多用されるなか、日本の自衛隊も導入することを決めました。
近年は自衛隊でもドローン研究が進み、すでに偵察・警戒監視に使われているほか、水中型や戦闘支援向けの水上無人艇も開発しています。しかしながら、いわゆる自爆ドローンの導入は初めてになり、ウクライナで毎日戦果をあげている状況をふまえて、日本も戦場での技術進化に追いつきたい形です。
今回導入するのは敵の車両などに体当たりを行い、そのまま自爆する小型のFPVドローンですが、まずは2026年に計310機を購入します。ちなみに、「FPV」とはFirst Person View(一人称視点)の略称であり、映像経由でドローンと同じ景色を見ながら、そのまま操縦できるという意味です。
実際に調達するドローンは決まっておらず、いまのところはイスラエル、オーストラリア、スペイン製が有力視されています。その運用は陸上自衛隊が担い、主に普通科連隊に配備しながら、島嶼防衛に向けた早期戦力化を目指す方針です。
ところで、310機という数は少ないように思えますが、これはあくまで最初の調達数に過ぎず、いわば「お試し購入」といえます。まずは海外製品を通して技術を学び、将来の国産開発で目指す性能水準をつかむわけです。
経験値を獲得するための購入ですが、少数調達で知られる自衛隊にしては、いきなり300機以上も買うのは異例中の異例です。
それだけ安全保障情勢が切迫しており、なるべく一括購入しながら、その操縦要員を短期養成しないといけません。もはや「ドローン=消耗品」という点を考えると、わずか310機で済むはずがなく、最終的には数千〜数万機になる可能性が高いです。
陸自では攻撃ヘリ部隊がなくなり、その分の人員・予算をドローンにふり向けます。従来の航空機と比べて、ドローンは短期間で大量にそろえられるほか、1機あたりの調達価格も安く、第1弾の310機にかかる費用は30億円ほどです。
ただし、どんな兵器であっても、それを扱える「人」がいなければ何も始まらず、まずはドローン操縦者を育成せねばなりません。操縦要員がいないにもかかわらず、最初から1,000機単位で導入しても、その大半が倉庫で眠るだけです。
離島防衛では射程・威力不足?
さて、今回導入するのは同じ対車両向けとはいえ、地上戦を繰り広げるウクライナとは違い、日本が想定しているのはあくまで島嶼戦です。
ウクライナの自爆ドローンは対戦車ミサイルに近く、その延長線にある兵器といえます。これは離島に迫る上陸部隊を狙ったり、同じ島にいる敵を攻撃するには十分でしょう。
一方、占拠された近隣の島を攻撃したり、そこにいる味方部隊を支援する場合、射程や威力が足りない恐れがあります。
離島防衛では島嶼間の相互支援が欠かせず、各守備隊が火力ネットワークを組み、補給・連絡線を確保しながら戦う仕組みです。この火力支援網に自爆ドローンも使うならば、それは対戦車ミサイルの延長線ではなく、対地・対艦ミサイル並みの性能が求められます。
つまるところ、島嶼戦では長い射程(飛行距離)と大きい爆薬搭載量が必要になり、自爆ドローンも大型化が避けられません。
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