海軍の主力艦載機として
アメリカ海軍といえば、原子力空母が中心の空母打撃群を持ち、圧倒的な航空運用力を誇ってきました。海軍であるにもかかわらず、その航空戦力は他国の空軍を上回り、世界ランキングではアメリカ空軍に次ぐ2位です。
このような強さを維持すべく、アメリカは高性能な空母艦載機に取り組み、1980年代からはF/A-18シリーズを使っています。
映画「トップガン・マーヴェリック(2022年)」でも、主人公たちが乗り回しており、世界的に有名な戦闘機になりました。
- 基本性能:F/A-18E/F戦闘機
全 長 | 18.29m |
全 幅 | 13.63m |
全 高 | 4.88m |
乗 員 | E型:1名 F型:2名 |
速 度 | マッハ1.8(時速km) |
航続距離 | 約3,300km |
高 度 | 約15,000m |
兵 装 | ・固定武装 20mmバルカン砲×1・搭載可能兵器 空対空ミサイル、空対地ミサイル 空対艦ミサイル、誘導爆弾など |
価 格 | 1機あたり約90億円 |
F/A-18シリーズは米海軍だけでなく、海兵隊も使う多用途戦闘機ですが、その汎用性と信頼性の高さから、傑作機のひとつに数えられています。
その歴史は1970年代にまでさかのぼり、F-4ファントムを置き換えるべく、まずは「F/A-18」が作られました。開発はノースロップ社に加えて、マクドネル・ダグラス社(現在のボーイング社)が行い、1983年から部隊配備を開始しました。
その後、1990年代には発展改良型の計画が始まり、1999年には現在の「F/A-18E/F」が登場しました。
なにやら複雑ですが、F/A-18がシリーズの原型にあたり、E/F型がいま使っているタです。なお、E/F型とは単座式のE型、2名が乗り組むF型の総称ですが、このパイロット数以外には相違点はありません。
この初期型とE/F型の能力差は大きく、機体そのものが大型化するなど、ほとんど再設計された形です。
E/F型は航続距離と運動性能、兵器搭載量の強化に加えて、一定のステルス性を確保しています。そして、レーダーを新型に変えたところ、同時処理できる目標数が倍になり、対応兵器の種類も増えました。
エンジンも電子制御タイプに変わり、自動最適化が実現したものの、以前より騒音はうるさくなりました。また、給油機としての役目も果たすべく、空中給油機能まで備えており、最大13トンの燃料を搭載できます。
ややこしいことに、同じE/F型でも違うバージョンがあって、最新のブロック3ともなれば、さらに航続距離と飛行時間が延び、コックピットも大きくアップグレードされました。
このように原型は古いとはいえ、近代化改修で現代も全然通用する機体になり、空母艦載機としてはもちろん、純粋な戦闘機としても世界トップクラスです。
ちなみに、F/A-18の愛称が「ホーネット(スズメバチ)」だったため、それを凌駕したE/F型は「スーパーホーネット」と呼びます。
数々の実戦で大活躍
空母艦載機である以上、F/A-18シリーズは空戦から対艦・対地攻撃まで担い、湾岸戦争(1991年)での実戦投入を皮切りに、航空優勢の確保に貢献しながら、地上部隊を援護してきました。
アフガニスタン、イラク戦争でも近接火力支援で味方を救い、その精密攻撃能力をフル発揮しました。現場兵士にはとっては心強く、A-10対地攻撃機とともに頼もしい存在でした。
また、電子戦に特化した派生型として、F/A-18G「グラウラー」がありますが、相手のレーダーや通信網を妨害できるため、序盤での航空優勢確保に欠かせません。
これらの実戦経験を通じて、F/A-18シリーズは信頼を勝ち取り、その性能は高く評価されています。
今後も活躍できるはず
シリーズの累計生産数は2,000機以上におよび、E/F型だけでも600機以上が調達されました。現在も絶賛運用中とはいえ、米海軍ではF-35C戦闘機の配備も進み、2040年頃には置き換えられると思われます。
ステルス機のF-35が増えるにつれて、F/A-18系が活躍できる機会は減り、いずれは退役せざるをえません。過去には外国に売り込み、それなりの国が検討しましたが、ほとんどはF-35を選びました。
一方、活躍の場がないわけでなく、最新のステルス機を必要しない、あるいは投入がもったいなければ、コスパのよい選択肢になるでしょう。
歴史をふりかえれば、アメリカは高価な高性能兵器のみならず、そこそこの性能・低価格の兵器も組み込み、費用対効果と適材適所を目指してきました。これは「ハイロー・ミックス」という構想ですが、F-35CとF/A-18シリーズも似た関係といえるでしょう。
その総合戦闘力は多くの場面で役立ち、敵のステルス機を相手にしない限り、従来と同じように活躍できます。将来的な機会は減るものの、使いどころさえ間違いなければ、現代戦を十分に戦える戦闘機なのです。
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