トランプ大統領の世界観、行動原理とは何か?

トランプ大統領 アメリカ
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損をしてきたアメリカ

第2次トランプ政権の発足にともない、アメリカの国内政治はもちろん、世界情勢も荒波に放り込まれました。特に外交・安全保障面の影響はすさまじく、以前の記事で解説したとおり、戦後秩序を崩壊させるレベルです。

トランプ政権で終わるアメリカの国際秩序・戦後世界
外交・安保で信用が失墜 第二次トランプ政権の発足以降、アメリカの外交・安全保障政策は急激に変わり、その豹変ぶりは世界に衝撃を与えました。薄々分かってい...

しかも、前回の就任時とは違って、今回はイエスマンばかりの側近政権になり、周辺を「チーム・トランプ」で固めました。その結果、ますます暴走に拍車がかかり、他所からは異常事態とさえ思える状況です。

では、トランプのふるまい、言動の裏には何があるのか?

トランプはアメリカが世界の食い物にされたうえ、ずっと損をしてきたという世界観を持っています。散々ぼったくられてきた以上、ここからは取り戻さねばならず、その矛先は同盟国・友好国に向かいがちです。

だからこそ、数では不利な国際機構や多国間関係を嫌い、力の優位性を活かせる二国間交渉を好み、お得意の取引(ディール)に持ち込みたがります。1対1という関係において、アメリカに対抗できるのは中国ぐらいですから。

アメリカ国民の目線に立てば、ここ20年で経済格差と社会不安が広がり、いろいろ疲れて切っている状態です。以前のような力強さは見当たらず、アメリカ社会が疲弊していたところ、トランプの世界観は上手くハマりました。

人間は自身を省みるよりも、他責思考の方が楽であって、「世界が悪く、アメリカが被害者」との主張は共感を呼び、多くの国民の琴線に触れた形です。彼らを基盤支持層とする限り、いまさら穏健路線への回帰は許されず、ウケる言動で満足させなければなりません。

このような主張に対して、長年の同盟国は反発したくなりますが、アメリカが疲れているのは変わらず、まずはこの点を認識したうえで、安全保障上の負担を分かち合うべきです。

アメリカ国民の心情に理解を寄せながら、こちらの負担を相対的に増やしつつ、協同的な姿勢を示すべきでしょう。

ただし、アメリカが戦後秩序を事実上つくり、その警察官役を担ってきたからには、身勝手な放棄は許されません。たとえ撤退するにしても、それは徐々にすべきであって、拙劣なやり方は力の空白を生み、あまりに無責任かつ危険です。

狂人を演じているのか

トランプの奔放なふるまいを見て、「わざとヤバイやつを演じている」との声があります。これは国際関係では「狂人理論」と呼び、相手を交渉のテーブルにつかせるべく、あえて予測不能な態度をとります。

実例をあげれば、かつてニクソン大統領がベトナム戦争で使い、北ベトナムとの和平を実現したとされてきました。

何をしでかすか分からない以上、交渉相手は慎重にならざるをえず、結果的に譲歩を引き出せるという戦法です。失うものがない無敵の人がいたら、怖がって言うことを聞く感じでしょうか。もっとも、これは「演じる」のが前提であって、本当の狂人がやると意味ありませんが。

アメリカのトランプ大統領果たして「演じて」いるのか?

トランプの言動は狂人理論っぽいですが、そのアプローチはニクソンとは異なり、その適用相手は仮想敵ではなく、なぜか同盟国・友好国になっています。

両方ともアメリカの疲弊を考えて、同盟国に負担増を求める点は変わらず、ニクソンも米中国交正常化など、頭ごなしに動いてはいました。

ただ、ニクソンはアメリカ主導の秩序そのものは守り、同盟国をないがしろにまではしていません。トランプは既存秩序の維持にはこだわらず、短期視点で自身の成果を追求してきました。

つまり、国際関係に対する理解の有無、中・長期的な視点の欠如が両者の差といえるでしょう。

影響されやすい性格

ところで、トランプ本人は意外にブレやすく、人に影響されやすい一面を持っています。1期目もそうでしたが、トランプ大統領は前言撤回や方針転換が多く、朝令暮改は珍しくありません。

前述の世界観があるとはいえ、それは「信念」からは遠く、最後に話した人に影響されるそうです。他国との首脳会談が終わると、前回と違うことを言ったり、向こうの主張に乗っかったりします。

以前に増して関税のメリットを強調したり、グリーンランド(デンマーク)の領有にこだわるのも、おそらく側近の誰かによる吹き込みです。

したがって、いちいち発言に過剰反応したり、ふり回される必要はなく、様子見と忍耐が求められます。そのうえで、トランプを真っ向から否定はせず、一定の理解を示しつつも、さりげなく誘導するのがセオリーです。

このあたりは相手次第なところが否めず、故・安倍首相のように波長が合えば、なにかと扱いやすいでしょう。残念ながら、人間的にそりが合わず、悪い印象を固められた場合、いくら話しても成果は期待できません(ドイツのメルケルのように)。

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