世界最大の輸送ヘリ
世界最大の輸送機といえば、アメリカのC-5ギャラクシーですが、世界最大の輸送ヘリはロシアの「Mi-26 ヘイロー」です。
旧ソ連はNATO側を打ち破るべく、大量の戦力・火力で圧倒しながら、西ヨーロッパをすばやく制圧する狙いでした。そこで、最前線や敵の背後にも戦力を次々と運び、空中機動を行える大型輸送ヘリを重視しました。
1960年代からMi-6などを使うなか、さらなる輸送力の強化を目指して、1970年代にMi-26の開発に取り組み、1983年から配備が始まりました。
- 基本性能:Mi-26
重 量 | 28.2t(空荷状態) |
全 長 | 40m |
全 高 | 8.1m |
乗 員 | 5名 |
速 度 | 最大時速295 km |
航続距離 | 800km |
高 度 | 4,600m |
輸送力 | 貨物:最大20トン 兵士:80〜90名 |
価 格 | 約35億円(中古) |
世界最大という名のとおり、Mi-26は全長40mと小型旅客機並みに長く、メイン・ローターは8枚という異例の多さです。そして、自身が28.2トンにもかかわらず、2.3万馬力の強力な双発エンジンを誇り、最大20トンもの貨物を運べます。
これはヘリでありながら、中型輸送機の「C-130」と大差がなく、世界最大のヘリにふさわしい輸送力です。1982年には離陸重量56トンで2,000mまで上がり、ヘリとしてのギネス記録を打ち立て、これは現在も破られていません。
榴弾砲や戦車は言うまでもなく、他の大型ヘリをつり下げて運んだり、あげくの果てには飛行機さえ輸送できます。小型ジェット機であれば、そのままつり下げて飛び、ヘリコプターが飛行機を運ぶという、目を疑う光景を披露してきました。
旅客機を運ぶ様子
世界最大なだけあって、機内の貨物室は輸送機並みに広く、80〜90名の兵士が乗り込み、傷病兵用の担架は60人分を設置できます。なお、人員だけに限れば(装備なし)、最大150名は詰め込めるそうです。
あまりに輸送力が高いことから、軍民両方における派生型が多く、消防型や医療搬送型、空中給油型などが存在します。ロシアと関係の深い国々にも輸出されており、ベラルーシと中国、北朝鮮、インド、カザフスタンなどが導入済みです。
マルチな活躍ぶり
対NATOで出番はなかったものの、チェルノブイリ原発事故では消化活動で働き、国内のチェチェン紛争にも投入されました。
一方、その輸送力は多方面で実績をつくり、シベリアで発見されたマンモスを運んだり、アフガニスタンでは損傷した米軍のMH-47チヌークをつり上げています。
特に災害派遣で大いに役立ち、2008年の四川大地震(中国)では救援隊として入り、中国側のMi-26とともに活躍しています。
あまり知られていませんが、2011年の東日本大震災でも飛来しており、新潟空港まで25名の救援隊を空輸しました。ただし、このときの機体はロシア軍ではなく、民間防衛・非常事態・自然災害復旧省の所属でした。
このように被災地支援では超役立つものの、本来は戦場で空中輸送を行う役割のため、ロシア=ウクライナ戦争にも投入されています。改修や再生産を試みたとはいえ、約300機と言われる総生産数のうち、現在のロシアの保有・稼働数は20〜25機です。
そんななか、2025年には駐機中にドローン攻撃を受けるなど、貴重な機体を喪失しました。新規生産や後継開発が進まない以上、この損失はロシア軍にとって痛手になり、最前線の空輸力に一定の悪影響を与えるでしょう。
ちなみに、ウクライナも旧ソ連だった関係から、数機のMi-26を保有していたところ、結局はまともに維持整備ができず、そのまま倉庫行き(退役)になりました。

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