25mm機関砲の「M242」
機関砲は対空防御、あるいは対地攻撃時に役立ち、現代戦でも好まれる兵器ですが、今回は「ブッシュマスター」について解説します。
正式には「M242」と呼び、1981年から使われる老舗兵器にあたり、計1万門以上が生産されてきました。
- 基本性能:M242ブッシュマスター
| 重 量 | 約120kg |
| 全 長 | 2.67m |
| 全 幅 | 0.32m |
| 口 径 | 25mm |
| 射 程 | 有効:3km 最大:6.8km |
| 射撃速度 | 毎分100〜200発 |
| 発射速度 | 毎秒1,100m |
| 価 格 | 約2,500〜3,000万円 |
ブッシュマスターの開発は1970年代に始まり、本来はM113装甲車の後継に載せるべく、米陸軍が計画を始動させました。
その開発はヒューズ・ヘリコプター社が担い、同社はAH-64攻撃ヘリ(アパッチ)を手がけるなど、あくまでヘリ開発の大手企業です。であるがゆえに、M242はアパッチへの搭載も見越して、その研究・開発が進められました。
結局、アパッチは25mmのM242を採用せず、別の30mm機関砲を選んだとはいえ、ブッシュマスターはM2ブラッドレーに搭載されました。ブラッドレーの主要火力になり、毎分200発の発射速度を誇るほか、有効射程は約3kmとなっています。
他の自動火器とは違って、M242はガスや反動作用には頼らず、電気モーターを使いながら、給弾や射撃時の基本動作を円滑化しました。
射撃手は単発モードに加えて、毎分100発と前述の毎分200発の3つから選び、目標に合わせた弾薬を選択できます。対装甲戦などでは徹甲弾を、それ以外では高性能な榴弾を使い、軽装甲車両からヘリコプターまで撃破可能です。
具体的に触れると、徹甲弾は対装甲を想定した以上、榴弾よりは貫通力が高く、戦車にも一定の打撃を与えられます。さすがに戦車の破壊は難しいものの、連続射撃で脆弱部分を狙えば、戦闘不能には追い込めるでしょう。
たとえば、湾岸戦争ではT-55などの旧式戦車には勝ち、ウクライナでは最新のT-90戦車を「撃破」したそうです。後者は議論の余地があるとはいえ、その損害は戦闘継続を断念するほどでした。
M2ブラッドレーの射撃(出典:アメリカ軍)
逆に相手が非装甲の車両であったり、ヘリのような航空機である場合、徹甲弾・榴弾を問わず、文字通り「ハチの巣」になります。
なお、M242はベルト式の給弾方法を使い、左右両方から供給できることから、違う弾薬をすばやく切り替えられます。また、撃ったあとの薬莢は横ではなく、前方に排出する仕組みのため、装甲車内への散乱を防ぎます。
主にM2ブラッドレーが使うなか、他の装甲車や水上艦艇にも搭載しており、米海軍では「Mk.38」の名前で導入しました。小型哨戒艇では主武装として扱い、大型艦艇でも不審船対策、対テロの防御手段になっています。
30mmに強化した「Mk.44」
一方、25mmの威力に不満を抱いたところ、1995年には「Mk.44 ブッシュマスターⅡ」ができあがり、口径を30mmにアップグレードしました。
開発コストを抑えるべく、部品の約70%はM242と共通化を行い、その基本構造を踏襲しながらも、純粋に火力は50%も強化しました。
30mm弾の威力はバカにならず、軽戦車の装甲を簡単に貫き、戦車でさえ無事では済みません。アパッチ攻撃ヘリが30mm機関砲を持ち、対装甲戦で強さを発揮する点をふまえると、戦車の撃破を期待できる威力です。
これを哨戒艇に装備すると、工作船から海賊船、麻薬密輸船は余裕で沈み、沿岸部の地上目標にもダメージを与えられます。
しかも、銃身と少数の部品を交換すれば、同機関砲は40mm口径に変わり、多くの派生型につながりました。
その結果、派生型を含む採用先が一気に広がり、世界30カ国以上で使われています。ちなみに、日本では海上保安庁の一部の巡視船に組み込み、陸上自衛隊の24式装輪装甲戦闘車に搭載されました。
現在では火力の高さ、運用時の柔軟性を考えて、こちらを採用するケースが多く、この先も各国の新型装甲車、または小型艦艇に装備される見込みです。


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