最初は「ジープ」
陸上自衛隊の汎用車両といえば、高機動車や軽装甲機動車が思い浮かぶなか、73式小型トラックも忘れてはなりません。これは非装甲の自衛隊車両ですが、73式大型トラックと同様に汎用性が高く、各地で見かけやすい装備品です。
ところで、同じ73式小型トラックといえども、初代はいわゆる「ジープ」にあたり、三菱自動車がライセンス生産しました。きちんと手入れさえすれば、その頑丈な車体は長持ちするため、物品愛護の精神が根付き、整備が大好きな自衛隊ではいまなお現役です。
ただ、1990年には旧式化が目立ち、三菱自動車は1996年にパジェロを使い、2代目の小型トラックを開発しました。この車両更新にともなって、2001年には従来の73式小型トラックではなく、名称が「1/2tトラック」に変更されます。
現在は「パジェロ」
- 基本性能:73式小型トラック
| 重 量 | 約1.94t |
| 全 長 | 4.14m |
| 全 幅 | 1.76m |
| 全 高 | 1.97m |
| 乗 員 | 4〜6名 |
| 速 度 | 時速135km |
| 行動距離 | 約400km |
| 価 格 | 約500万円 |
現在版はパジェロをベースにしながら、エンジンなどの基本構造は同じとはいえ、その外見は市販の一般車両とは異なり、自衛隊特有のオリーブドラブ色(OD色)に塗装しました。
夜間での行動・戦闘に対応するべく、自衛隊版は車外に光が漏れづらく、いわゆる「灯火管制」を意識しました。
いろいろ車両も改良されており、荷台にある折りたたみ式の座席を使えば、定員は最大6名まで増えます(市販車は4名)。さらに、無線機用のスペースを設けたり、89式小銃などを収納するべく、運転席と助手席のドアにラックを作りました。
旧式のジープ型と比べると、変速機はマニュアルからオートマチックになり、同じ4輪駆動方式にもかかわらず、サスペンションの改良で安定性は増しました。キャタピラ式の車両には劣るものの、意外にもジープよりは悪路に強く、不整地走破能力を確保しています。
一方、民生品の恩恵であるエアコンが付き、車内の快適性は大きく改善したほか、災害派遣時の情報収集をふまえて、ジープにはなかったラジオを備えました。
そんな自衛隊版パジェロは役割が広く、主に指揮官の移動手段を務めながらも、一般の隊員、機関銃、迫撃砲などを運びます。
対戦車ミサイルを持ち込めば、約3名の要員とともに前線まで進み、一撃離脱戦法に貢献します。ただし、120mm迫撃砲などの重装備になると、さすがに馬力が足りず、高機動車に任せるスタイルです。
固定の兵装はないものの、車体を覆う幌(ほろ)を外せば、軽機関銃・重機関銃を設置できるうえ、自衛隊がイラクに派遣されたとき、特別な防弾加工を施しました。
実戦経験はある?
よく見かける自衛隊車両とはいえ、使用後の民間への払い下げはなく、基本的に一般人は入手できません。あくまで軍用車両である以上、防衛省はスクラップ目的で民間業車に譲り、再販などは禁止しています。
されど、一部の業者は契約に従わず、勝手に中古車両と部品を売り払い、何度か問題視されてきました。そして、民間のパジェロがベースのため、市販品を組み合わせれば、わりと簡単に再現できてしまい、たまに中古市場に出回っています。
他方、ロシアによるウクライナ侵略を受けて、日本はウクライナに小型トラックを送り、高機動車と合わせて現地で活躍中です。
こちらも中古車両ですが、日本車の信頼性は戦場でも変わらず、ウクライナ軍からは使い勝手がよく、ぬかるんだ道路を問題なく走ったり、荷物を詰め込んでも速力が落ちないと評判です。
ドアの小銃用ラックも好評なれど、日本側はスペアパーツを送っておらず、現地では部品の調達に苦労しています。まともな軍事支援に慣れていない以上、不備が出るのは仕方ないとはいえ、今後の支援や装備品輸出を考えると、アフターサポートの課題が浮かびました。
いずれにせよ、ウクライナ支援で「実戦」を経験した結果、高機動車とともに数少ない存在になりました。
なお、後継車両は決まっておらず、正式な動きはありませんが、防衛省はトヨタと契約を結び、ランドクルーザーで実験しているようです。これは安全技術を試すものですが、3代目には民間のオフロード車を選び、後継にする動きと思われます。
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