日本人もいる?アメリカのDARPAの最新技術と予算

アメリカ
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敗北が生んだ研究機関

現代はインターネット・GPSなどが欠かせず、もはや我々の生活を支える基盤ですが、これらは共通の「親」から生まれました。

それがアメリカの国防高等研究計画局、通称「DARPA(ダーパ)」という研究機関であり、国防総省の下で数々の技術を発明しています。ちなみに、日本では「ダーパ」と呼ぶものの、実際の英語発音は「ダルパ」です。

そんなDARPAは1958年の発足以降、軍事技術の開発のみならず、現代社会を形作る発明を次々と生み、インターネット・GPSはその一部にすぎません。

バージニア州・アーリントンに本部を置き、約6,000億円の年間予算をもらいますが、国防総省の科学技術開発費のうち、およそ25%に相当する金額です。

ところが、これほどの予算規模にもかかわらず、職員数は約300名しかいません。予算規模と仕事のスケールに対して、その組織規模は驚くほど小さく、このギャップが独特の運営方針を象徴しています。

少数精鋭主義に基づき、最も優秀な研究者しか集めず、そこに大量の予算を注ぎ込み、効率よく成果を出すスタイルです。

その背景には宇宙競争での「敗北」がありました。

1957年10月、ソ連が「スプートニク1号」を宇宙空間に送り、世界初の人工衛星の打ち上げに成功します。この瞬間、アメリカは宇宙開発で劣後してしまい、政府に衝撃と危機感を与えました。

「ソ連の技術に負けた」という焦りから、翌年にはDARPAの設立にふみ切り、常識にとらわれない研究を目指します。

数々の発明技術

柔軟な研究スタイルの下、現代社会の基盤となる発明を追い、1969年にはインターネットの原型が登場しました。

これは「ARPANET(アーパネット)」と言い、核攻撃を受けても通信能力を保ち、軍事作戦を支えるネットワークでした。やがて民間に開放したところ、インターネットとして全世界をつなぎ、世の中を一変させました。

このネットの先祖に加えて、人工衛星群による測位システム、すなわち「GPS」の開発に取り組み、艦船や航空機の航法を支えたり、ミサイルの精密誘導を可能にしました。そして、これも1980年代に技術開放が進み、スマートフォンに使われています。

ほかにも、パソコンの自然言語処理、音声認識の技術、一部のAI技術もDARPAに由来しており、その研究成果は民間技術の土台です。

なお、純粋な軍事分野でいえば、DARPAはステルス技術に力を注ぎ、レーダーに映らない性能を実現しました。これは現代のステルス機の基礎にあたり、F-117爆撃機で本格的に導入したあと、B-2爆撃機やF-22戦闘機に使われました。

以前紹介した無人水上艦「デファイアント」、無人潜水艇「マンタレイ」、曲がるスナイパー弾、AI搭載の無人戦闘機「VISTA」など、最先端の実験兵器にDARPAは関わり、米軍の優位性を支えています。

実態は資金提供機関?

ところで、世界中にある無数の研究機関のうち、なぜDARPAは突出した研究実績を誇るのか?

その秘密は潤沢な予算とともに、先ほどの柔軟な運営スタイル、組織設計にあります。

まず、DARPAは自前の研究施設をほぼ持たず、大学・民間企業・スタートアップ企業に資金を送り、代わりに成果を出してもらう仕組みです。

つまり、DARPAは普通の研究組織ではなく、巨大なファンディング機関に近く、全米から最優秀の頭脳を選びながら、研究ネットワークとして活用してきました。

少数精鋭主義の下、約150名のプログラム・マネージャー(PM)を選び、各プロジェクトの統括責任者を担当します。

彼らは大学・民間企業・軍など、各方面から約4〜6年の任期で招き、自分の研究テーマに没頭する専門家です。その道のエキスパートにあたり、大きな権限を与えられた結果、自分で予算配分さえ決められます。

任期が終わると元の職場に戻るため、なんとしても成果を出さねばならず、出世や組織の論理にとらわれません。限られた期間といえども、望むままに潤沢な予算をもらい、好きな研究に集中できるからこそ、通常よりも成果が見込めるわけです。

DARPAの本部ビル

一般的な官僚組織と違って、DARPAは失敗を許容するどころか、むしろ高リスクな研究を推奨します。

たとえ成功確率が低くても、潜在的なインパクトが大きければ、積極的に投資するスタイルです。特に他の研究所が投資をせず、見逃すようなニッチな分野を好み、多くの技術研究者を救ってきました。

さらに、国防総省の傘下にありながら、大統領と国防長官の直轄にあるため、軍と連邦議会からの干渉を受けず、行動の自由や柔軟性が保証されています。

その代わり、研究の大半は「一般公募」になり、具体的な成果はともかく、目標は原則公開せねばなりません。

DARPAモデルで選定

さて、DARPAが資金を提供すれば、技術者は研究に専念できる、DARPAは研究成果が見込める、という「Win-Winの関係」にありますが、実際はどのように選ばれるのか?

一般公募は約2年ごとに行い、その条件はアメリカ人にとどまらず、外国人でも応募は可能です。それゆえ、主にアメリカの大学・企業所属とはいえ、日本人研究者も少数ながら関わり、プロジェクトに参画してきました。

詳しくはホームページに出ますが、書類審査だけ「万単位」の応募が集まり、そこから約3,000件に絞り込む形です。

この選定方法は「DARPAモデル」と呼び、シンプルな流れにもかかわらず、民間でも投資案件を決めるとき、有効な手法として用いられます。

DARPAの有効性を受けてか、日本でも防衛装備庁の創設(2015年)にともなって、「日本版DARPA」を目指す動きがあるようです。

再び重要性が高まる

DARPAでは現在も最前線の研究が続き、マッハ5以上で飛ぶ極超音速兵器、AIを使う自律型無人システム、大量のドローンの同時運用を研究中です。

そして、人間の脳と機械を直接つなぎ、負傷した兵士が義肢を制御したり、パイロットが思考だけで機体を操作するなど、まるでガンダムの世界に近づいています。

最近は中国の研究スピードがすさまじく、極超音速兵器・AI技術・ドローンにおいても、一部ではアメリカを凌駕するそうです。

「失敗を恐れず、常識を疑い、20年後の技術に投資する」

DARPAの哲学は軍事・民間を問わず、多くのイノーベーション技術を生み、東西冷戦の勝利を支えました。

今度は「スプートニク・ショック」ならぬ、「チャイナ・ショック」になりそうですが、大国間の技術競争で勝ち抜くべく、再びDARPAの重要性が高まっています。

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