ヨーロッパの中型輸送機
戦術輸送に使う中型輸送機といえば、世界的ベストセラーの「C-130」が有名ですが、これのライバルともされるのがエアバス社の「A400M アトラス」です。
ヨーロッパ勢の中型輸送機ともいわれるなか、近年はインドネシアやマレーシア、カザフスタンへの輸出にも成功しました。
- 基本性能:A400Mアトラス
全 長 | 45.1m |
全 幅 | 14.7m |
全 高 | 42.4m |
乗 員 | 2名 |
速 度 | 時速741km |
航続距離 | 満載:約3,300km 空荷:約7,600km |
高 度 | 約11,300m |
滑走距離 | 離陸:980m 着陸:770m |
輸送能力 | 最大37トン |
価 格 | 1機あたり約220億円 |
民間航空機でもおなじみのエアバス社が作り、2013年から英仏独などで運用されてきました。現在の配備数は120機以上ですが、その裏には開発時のトラブルやコスト高騰を乗り越えてきた過去があります。
そもそもの始まりは、エアバス社が注文を事前確約すべく、各国の要望をあれこれ受け入れたことした。欧州の次世代輸送機として、輸送力や航続距離などの各分野で高性能を目指すなか、実現性を超えて盛り込みすぎました。
しかも、未舗装の滑走路でも使うべく、これら性能をプロペラ・エンジンで実現せねばなりません。
その結果、無理やり出力を高めたエンジンで欠陥が見つかり、耐久試験でも胴体にヒビが入るなど、計画は大幅な遅延とコスト増に見舞われました。こうしたプロジェクト炎上は納期遅延による違約金訴訟にもつながり、問題点の改善が急いで進められました。
プロジェクトが炎上したA400M(出典:イギリス空軍)
こうして最終的にできあがった機体は、C-130の倍近い搭載量を誇り、航続距離でも優れた形になりました。
戦車こそ載せられないものの、歩兵戦闘車や最大3両のM113装甲兵員輸送車を空輸できたり、NATO標準の貨物パレット(コンテナ)を9個まで搭載可能です。C-130ではM113が2両、パレットが6個に限られるのを考えると、純粋な輸送力ではA400Mが上回ります。
その貨物室は攻撃ヘリが2機も収まるほど広く、人員輸送だけでいえば、完全武装の兵士を116名も輸送できます。ほかにも、最大66個の担架を設置できることから、戦地からの医療搬送にも使われてきました。
つまり、50〜100人規模の部隊を軽車両とともに空輸するには適しており、2〜3機を投入すれば、緊急部隊の展開や災害派遣任務に対応できます。
A400Mの貨物室(出典:アメリカ空軍)
こうした輸送能力に加えて、A400Mはコックピットの計器類をデジタル化したり、コンピュータ制御を使った「フライ・バイ・ワイヤ」の操縦機能を取り入れました。
機体の30%を複合素材で軽量化する一方、4つのプロペラエンジンのうち、1・3番と2・4番がそれぞれ逆方向に回転することで、騒音低下と効率向上を実現しています。
また、航続距離を伸ばす空中給油機能を持つなか、簡単な追加改修さえすれば、給油する能力も手に入れられます。C-130にも空中給油タイプ(KC-130)があるとはいえ、こちらは本格改造せねばならず、この点ではA400Mの方が柔軟といえるでしょう。
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