短期開発の改良兵器
ウクライナがロシアの侵略と戦う以上、得られるだけの武器支援が必要ですが、その関係で西側兵器の実験場になりました。
たとえば、同地には各国の防空兵器が渡り、対ドローンからミサイル迎撃まで行い、都市部や地上部隊を守っています。
こうしたなか、イギリスはウクライナの防空能力を支えるべく、新たに「グレイブ・ホーク」を作り、2025年始めにウクライナへ供与しました。
- 基本性能:グレイブ・ホーク(R-37ミサイル)
全 長 | 4m |
直 径 | 0.4m |
射 程 | 30km以上 |
速 度 | 時速2,300km |
価 格 | 不明 |
グレイブ・ホークとはひと言でいえば、コンテナから発射可能な防空ミサイルであり、すばやい機動展開に向いています。しかも、通常の兵器開発が数年はかかるところ、わずか18ヶ月という短期間で登場させました。
その実態はゼロベースからの開発ではなく、ソ連製の「R-37」空対空ミサイルを使い、それを改良・応用したものです。
R-37はソ連機で使うミサイルですが、ウクライナで現地生産できるうえ、ソ連時代の在庫もそれなりにあります。西側の防空兵器は高性能とはいえ、激しい消耗戦では軍事供与が間に合わず、ウクライナ自身が生産・供給できるならば、それに越したことはありません。
また、R-37は運用上の互換性も問題なく、システムが異なる西側兵器よりも、兵站面での負担は少ないといえます。
ミサイルは約30kmの射程距離を持ち、目標の熱源にロックオンしながら、時速2,300kmで追尾する仕組みです。そして、長さ6mのコンテナにミサイル2発が収まり、システム操作はゲーム機のような簡易機器を使います。
すなわち、グレイブ・ホークとはイギリスの手が加わった結果、旧ソ連の対空ミサイルが地上防空兵器に変わり、なおかつ機動力と運用柔軟性を高めました。
外見からは分からない利点
グレイブ・ホークは機動展開力に加えて、その見た目は普通のコンテナと変わらず、ほとんど外見からは区別できません。
目標の熱源を捉えるべく、コンテナには画像センサーが付いていますが、電波を出すレーダーとは異なり、敵による逆探知の可能性を抑えました。
数多くある民間コンテナに紛れば、敵はどれがミサイルなのか特定できず、高い秘匿性を期待できます。全てのコンテナを狙えば話は別ですが、そこまでの無差別攻撃はできないほか、あまりに効率が悪すぎるでしょう。
見た目は普通のコンテナ(出典:イギリス軍)
すでに2基のグレイブ・ホークが届き、ミサイルや自爆ドローンを撃墜するなか、さらに15基がウクライナに供与される予定です。
既存兵器の活用により、通常より安いにもかかわらず、その性能と費用対効果は申し分なく、防空戦に貢献できるのは間違いありません。

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