孤立しやすいクリミア半島
ロシア=ウクライナ戦争が停滞するなか、ウクライナは2026年春から南部のロシア軍を狙い、特に補給線をひたすら攻撃しています。
ロシアは2022年の侵攻開始以降、北部・東部では苦戦してきたものの、南部だけは初戦で占領に成功しました。その後、主要都市のヘルソンから撤退するも、ドニエプル河を挟んで対峙が続き、ウクライナ側の反攻作戦も阻止。
その結果、ロシア本土からウクライナ南部を通り、クリミア半島への陸上補給路を確保しました。クリミア半島といえば、2014年にロシアが占領・併合したあと、ロシア本土と新たにクリミア大橋で結び、食いつないできました。
しかし、ひとつの橋に依存する限り、兵站上の脆弱性は変わらず、橋は何度か攻撃されています。
ウクライナ南部の占領にともなって、高速道路と鉄道で物資を送り込み、クリミアの補給事情は劇的に改善しました。ウクライナ侵攻の主目的は現政権の打破、ウクライナ全体の従属とはいえ、ロシアからクリミアへの打通も目的のひとつであり、この点だけは達成した・・・はずでした。
AI搭載の自爆ドローン
ところが、最近はウクライナが長距離ドローンを放ち、南部の幹線道路を集中攻撃しているため、先述の陸上補給路が安全ではなくなり、クリミアは再び孤立の危機にあります。
ロシア軍のトラックを見つけると、自爆ドローンが次々と突っ込み、補給物資を炎上させるなか、特に戦果をあげているのが「ホーネットです。
- 基本性能:ホーネット・ドローン
| 全 長 | 約1.4m |
| 全 幅 | 約2.2m |
| 速 度 | 時速100〜120km |
| 航続距離 | 最大200km |
| 弾 頭 | 高性能爆薬:5kg |
| 価 格 | 約70万円 |
これはアメリカの企業が開発したものの、ウクライナ国内で大量生産しており、1機あたりの値段は約70万円です。
比較的安価にもかかわらず、約5kgの爆薬を搭載しながら、最大200km先まで飛び、軍用車両を大破・炎上させられます。また、電波妨害に対抗するべく、あのスターリンク・システムを使い、現時点では優れた耐性を継続中です。
AI補助で識別・攻撃可能
さらに、ホーネットは照準システムにAIを使い、正確かつ効率的に目標を選ぶとともに、操縦者の負担を大きく減らしました。
過去4年間の膨大な映像に基づいて、ロシア軍の車両・目標をAIに学習させた結果、目標識別能力が飛躍的に伸び、人間は飛行に専念できるわけです。直近のデータも読み込み、常にアルゴリズムを更新すれば、最新の戦況に対応できます。
そして、人間の負担が減れば、攻撃の「質」だけではなく、「量」も強化できます。実際にウクライナは100機単位で放ち、目標識別・選定をAIに任せながら、次々とロシア軍の車両に突っ込ませました。
1ヶ月足らずで120〜140台を炎上させたほか、クリミアの防空兵器も破壊しています。南部の幹線道路は後方地帯ではなく、いまや「前線」と化してしまい、そこを走るリスクが激増しました。
ウクライナ南部に限らず、同地は幹線道路(舗装)が少なく、1本でも使用不能になると、戦域全体に悪影響を及ぼします。
他方、クリミア大橋はあれども、過去の攻撃で構造物が傷つき、フル活用できていません。いまだ重量制限を解除できず、本来の輸送力を発揮できない状況です。
代わりに大型フェリーを投入したところ、こちらもあっという間に標的になり、全て(3隻)が損傷・修理中です。1年かけてようやく修理しても、すぐに自爆ドローンが突っ込み、またしても修理ドック行きになりました。
炎上するロシア軍のトラック
必然的に全体の輸送量は落ち込み、クリミアのロシア軍はかつてないほど、深刻な補給難に直面しています。特に燃料と弾薬が足りておらず、防空能力を削れたからか、余計にドローン攻撃に脆弱になる、という悪循環に陥りました。
ドローンで補給線を集中的に狙い、クリミアの孤立化を図るなか、これは大規模作戦の前段階にすぎず、クリミア奪還を予測する者さえいます。古来より敵の補給線を叩き、あらかじめ弱体化させたあと、一気に攻撃するのが定石ですから。
いまの戦況をふまえると、クリミアのロシア軍は敵のドローンにより、いわゆる「兵糧攻め」を受けています。ここでウクライナが南部の防衛線を破れば、ロシア本土とクリミアの連絡路を断ち、半島の孤立化を確定できるでしょう。
そうなると、戦局はウクライナ有利に傾き、クリミアに突入でもすれば、戦争の勝敗を決するほどの戦果です。
いずれにせよ、最前線での攻撃だけではなく、後方の兵站線を狙う「補給戦」においても、いまや自爆ドローンが欠かせず、極めて効果的な戦術だと証明しました。


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