空飛ぶ管制塔！E-767早期警戒管制機「AWACS」の探知距離

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航空戦に必須な「空の目」

空戦では先に発見した側が有利なものの、戦闘機のレーダーは出力・探知距離が限られており、広範囲をカバーできる「早期警戒管制機」が欠かせません。

言うまでもなく、戦闘機は防空レーダー、味方艦船とも連携しますが、これらは水平線の先を探知しづらく、高高度から見渡せる早期警戒管制機が必要です。

早期警戒管制機は円盤型レーダーを背中に持ち、英語では「Airborne Warning and Control System」と呼ばれることから、その頭文字をとった「AWACS（エーワックス）」として知られています。

ここで注意したいのが、探知や情報共有こそできるが、管制能力が限られている「早期警戒機（AEW）」という機種もある点です。

航空自衛隊は「E-767」を2001年に導入しましたが、アメリカのボーイング社が開発したにもかかわらず、いま使っているのは日本のみという不思議な状況です。

もともとアメリカや韓国、オーストラリアも検討していたものの、低コストの他機種を導入したところ、日本だけが使う「J-WACS（ジェイワックス）」になりました。

「E-767」は民間旅客機にそのまま円盤型レーダーを載せた姿を持ち、全周360度に対する監視能力と最大350km以上の探知距離を誇ります。

このレーダーはゆっくり回転しながら、かなり強い電波を発するため、乗員保護の観点から機体にはほとんど窓がなく、地上における作動は特別許可がない限り、行えません。

機内には19名が乗り込み、管制塔にあるような機材が並ぶなか、最長12時間以上の連続飛行にも耐えるべく、休息スペースと簡易キッチンも設けられました。

一方、「E-767」は指揮管制能力も合わせ持ち、戦闘空域からは離れた場所で活動するため、兵装や自衛機能は与えられていません。

また、「E-767」は探知した目標をただ伝えるのではなく、その脅威度や優先順位を判別したうえで、味方戦闘機を指揮・誘導する「空中司令部」にもなります。

こうした役割は地上司令部も担うとはいえ、敵の最重要目標であることから、地上レーダーとともに狙われやすく、バックアップとして空中退避できる早期警戒管制機がいるわけです。

ただし、高価値目標である早期警戒管制機も狙われやすく、戦闘機のような機動性と兵装を持たないという脆弱性を抱えています。ロシア＝ウクライナ戦争では、ロシア空軍の数少ない早期警戒管制機が2機も撃墜されるなど、やはり優先目標として狙われやすいのは変わりません。

「空の目」を潰されたら明らかに劣勢になるため、現代空戦ではいかにAWACSを守り切るかという課題が勝敗を分けます。

そんな超重要アセットの早期警戒管制機は、他の軍用機と比べてもコストが高く、整備と訓練を考えて最低3〜4機の導入となると手が出せる国は限られます。

特に、空自のE-767は1機あたり550億円以上という金額のせいで、浜松基地にわずか4機が配備されているにすぎず、稼働率と被撃墜リスクをふまえると、冗長性はほとんどありません。

他方、海外では早期警戒管制機と比べて能力は劣るものの、一定の管制能力を備えた「AEW&C（空中早期警戒管制機）」へのシフトが見られます。これはAWACSとAEWの中間ともいえる機体で、指揮管制能力が少し足りなくても、維持管理費を含むコスト面では有利です。

※ややこしいですが、もともと「AWACS」はE-3とE-767のみを指す固有名詞でした。それが、いつしか全般用語として定着したわけですが、その他の早期警戒管制機は本来「AEW&C」と呼ぶのが正確です。

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