最新技術を試す「実証実験機」
現在運用されているF-2戦闘機の後継を見据えた次期戦闘機がイギリス、イタリアと共同開発されることになった一方、以前から国産ステルス機に向けた布石として注目されていた「X-2」は2017年に最後の試験飛行を実施してその役割を終了しました。
世間では「心神」の愛称で知られたこの機体は一体どのような存在だったのでしょうか。
⚪︎基本性能:先進技術実証機「X-2」
重 量 | 9.7t |
全 長 | 14.1m |
全 幅 | 9.1m |
全 高 | 4.5m |
乗 員 | 1名 |
兵 装 | なし |
価 格 | 400億円(開発費) |
2016年に初飛行を行った「X-2」は先進技術実証機として次世代戦闘機の開発に向けて最先端技術を試験評価する目的で作られた試作機で、1950〜60年代の実験機「X1G」に続く研究機体という意味で「X-2」と名付けられました。
プロジェクトには三菱重工業を中心とした220社以上の国内企業が参加し、使用部品の90%が国産であったことから「日本の塊」という意味を持ち、富士山の異名でもある「心神」と呼ばれました。
ここで改めて注意したいのが「X-2」があくまで最新技術を実験するための機体で、もともと「F-3(仮)戦闘機」としての量産を目指したわけでなかった点です。
「X-2」で得られたデータや教訓は次期戦闘機開発に活用されるので、両者は決して無関係でないものの、「X-2 = F-3」ではありません。結局のところ、このプロジェクトは日本が独自戦闘機を作って、飛ばせるというのを確認・証明するためでした。
実験機の「X-2」は、飛行制御システムやエンジン部分を中心に新技術が盛り込まれた結果、通常は失速するような状況においても、自動制御による高い運動性を確保しました。
さらに、日本の弱点といわれるエンジンも1基あたり5トン級の出力を実現して、一部成果は海自のP-1哨戒機のエンジンに流用されました。
また、本機はステルス・デザインと電波吸収材のおかげでレーダー上は昆虫程度にしか映らず、ステルス機が空自の防空レーダーにどのように映るかを知るうえでも大いに役立ちました。
役割を果たして「任務完了」
1機のみが製造された「X-2」は飛行開発実験団のある岐阜基地で計32回の試験飛行を行って次世代につながる貴重なデータをもたらしましたが、予定されていた試験を終えた現在は「任務完了」の状態です。
とはいえ、貴重な国産ステルス機としてまだ飛行できるので、今もステルス技術とその対策を試すテスト機として活用されています。
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