信頼と実績のミサイル
桁外れの軍事力を誇るアメリカは、その強力な打撃力を支える兵器のひとつとして「トマホーク巡航ミサイル」を長年愛用してきました。
水上艦と潜水艦から発射されるこのミサイルは、アメリカが参加した戦争・紛争のほとんどに投入されてきた実績を持ち、最も成功した兵器のひとつとして数えられています。
- 基本性能:トマホーク最新型「ブロックV」
全 長 | 5.56m |
直 径 | 0.52m |
重 量 | 約1,300kg |
速 度 | 時速880km |
射 程 | 1,500〜2,000km |
弾 頭 | 454kg (通常弾頭) |
価 格 | 1発あたり約4億円 |
対地・対艦攻撃用の巡航ミサイルとして1970年代に開発されたトマホークは、ロケットではなくジェットエンジンを使用することから飛翔速度は遅いものの、高い燃焼効率のおかげで長射程と低空飛行による探知回避が可能です。
対地攻撃用のものは核戦争を想定して以前は核弾頭を搭載していましたが、冷戦終結と核軍縮の流れを受けて、現在は通常弾頭、もしくはクラスター爆弾タイプ(子爆弾166個)に移行しました。
そんなトマホークが実戦で初めて使われたのは冷戦終結後の湾岸戦争であり、このときイラク軍に向けて発射されたおよそ280発のうち、85%以上が命中する結果を出しました。
このように実戦での有効性を証明したトマホークはその後も米軍による空爆で重用されていて、今では世界一の実績と信頼性を誇る巡航ミサイルになりました。
初戦の防空網制圧によく使われるトマホークは、レーダーや飛行場を含むあらゆる地上施設を攻撃できて、強化弾頭を使えば地下目標も破壊可能です。
一方、対艦攻撃用も命中すれば相手艦船を最低でも大破・航行不能に追い込み、被弾箇所と対処具合によっては大型艦すら撃沈されます。
また、命中精度についても、トマホークは発射後に自身のセンサーを使って地形をスキャンしつつ、あらかじめ入力された情報と照合しながら軌道修正を行えます。
そして、最新バージョンではGPS誘導と発射後の目標変更、リアルタイム映像の送信が可能となったので、命中精度は初期型よりも大きく向上しました。
いまも通用するのか?
開発から半世紀以上が過ぎたトマホークですが、定期的な近代化改修で能力向上を実現しており、最新型は対中国を見据えた「ブロックV」と呼ばれるバージョンです。
これは対艦攻撃能力を高めたもので、射程距離の延伸と高高度からの垂直突入能力、そして誘導機能やセンサーを改良して動く目標への対処能力を強化しました。
ほかにも、母艦から発射後に別の航空機や艦艇による誘導が可能となり、ネットワーク型戦闘を見据えたアップグレードとなりました。
しかし、巡航ミサイルそのものは極超音速ミサイルが開発されている今は「遅い」兵器に分類され、防空能力を高めている中国軍にどこまで通用するか未知数です。
ただ、ロシア=ウクライナ戦争では「遅い巡航ミサイル」がインフラ施設などに被害を与えて、さらに低速の自爆ドローンも戦果を挙げた事実を考えると、時代遅れの兵器との評価を下すのはまだ早いといえます。
むしろ、大量投入で相手の防空網を圧迫できる効果が再確認されてたので、亜音速のトマホークも使い方次第でまだ十分に有効なのです。
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