パワーパック問題を克服
さて、K2戦車の話になると、「欠陥」という評判とは切り離せません。
厳密にいえば、動力を支えるパワーパックを指しており、この部分が欠陥品であったことから、いまだにK2戦車を軽んじる傾向があります。
パワーパックはエンジンと変速機を一体化させたもので、韓国がK2向けに開発した変速機に問題があったのは事実です。この不具合にともない、K2は本来の加速性能を達成できず、急いでドイツ産のパワーパックを導入しました。
その間に調査を進めるなか、新たに耐久性の問題が発覚するなど、国産変速機の試練はつづき、最終的にはドイツ産のパワーパック、あるいは「韓国産エンジン×ドイツ産変速機」で解決しました。
思い切ってドイツ産に移行したところ、欠陥問題を乗り越えただけでなく、その整備性もよくなり、戦車としての信頼性は増しました。
ただし、「国産派」の圧力は無視できず、目標性能を引き下げながら、2021年に国産変速機の開発が完了しました。
では、この韓国産のパワーパックはどうなったのか?
2024年の耐久試験において、306時間にわたって連続走行に取り組み、ついに9,200kmで故障しました。これは目標の9,600kmより少ないとはいえ、そもそもの要求性能があまりに高く、ドイツ製ですら実現できていません。
言いかえれば、「退役まで一度も故障しない」に等しく、わずか400kmの不足だった点を考えると、韓国技術は急成長を遂げました。
なお、トルコはシリア問題で経済制裁を受けた際、ドイツ産のパワーパックを輸入できず、代替品として韓国産に目をつけました。その結果、トルコの主力戦車「アルタイ」のうち、一部が韓国産パワーパックを使っており、最大100両分が調達されるそうです。

このように開発史をふりかえると、韓国はパワーパック自体は作れたものの、目標の下方修正や欠陥発覚など、その技術力不足は否めません。
しかし、兵器開発の苦難は韓国に限らず、どの国にも当てはまる試練であって、その過程で得られた経験・教訓は今後につながるはずです。
欠陥があったのは事実とはいえ、その後は問題をクリアしており、いまやK2戦車は有力な3.5世代戦車として、他の西側戦車とともに肩を並べました。
いつまでも開発時の問題にこだわり、肝心の「現在」から目をそらしていると、足元をすくわれることになります。
ポーランドが爆買い
実際のところ、K2戦車は世界的な評価が高く、最近は韓国の兵器輸出を支えるほどです。
たとえば、ポーランドは陸軍強国を目指すにあたり、約1,000両のK2戦車を爆買いしました。
隣国・ウクライナが侵略されたのを受けて、ポーランドは陸軍の近代化・大拡張を急ぎ、アメリカからM1エイブラムスを250両ほど購入しました。
それでも、旧ソ連戦車の更新分には足りず、別オプションとしてK2戦車を選び、同じ韓国製のK9自走榴弾砲を670両、FA-50軽戦闘機を50機も買いました。

まさに韓国兵器の爆買いですが、まずは180両のK2戦車をそのまま購入したあと、残り約800両はポーランド向けの「K2PL」として共同開発されます。
ポーランドはウクライナ支援にも熱心なため、中・東欧のリーダー格にのし上がり、NATO同盟の中でも「頼れる」強国になりました。
欧州勢で最も危機感が強く、陸軍増強に注力する国がK2戦車を選び、1,000両も爆買い意義は計り知れません。この大型契約はK2の評価を上げるほか、さらなる輸出先の開拓に弾みをつけました。
では、なぜポーランドはK2戦車を選んだのか?
これはK2があらゆる点で「ちょうどよかった」からです。
高性能な兵器を買う場合、性能・価格面での優劣はもちろん、仮想敵になりそうな相手からは買えません。この点、同じ西側陣営の韓国はパートナーにふさわしく、議会承認で手間のかかるアメリカより買いやすいです。
また、K2は本国仕様と輸出版で能力差がなく、売込みに熱心な韓国側は早い納期とともに、手厚いアフター・サポート(整備点検・改修)を提示しました。
すなわち、K2戦車は西側標準の性能を持ちながら、その導入と運用、改修を巡る柔軟性が高く、サービス面で他を圧倒していたわけです。カスタマー・サービスの良さはK2に限らず、韓国製の兵器全般に共通するもので、買う側にとっては魅力的でしょう。
コメント