普通科中隊の頼れる火力
地上戦で勝敗をしばしば分けるのが「火力」の優劣であり、敵を阻止する防衛戦でも、攻勢をかける場合でも、火砲なくして成功はありえません。
直近のロシア・ウクライナ戦争も示したように、こうした火力の必要性は今も昔も変わらず、特に機動力の優れた自走砲やロケット砲の活躍ぶりが注目されました。
しかし、自走砲やロケット砲は大火力を叩き込める一方、これら大型兵器はコストが高く、運用面でもいろいろ大変です。そのため、最前線の兵士にとっては、じつは迫撃砲がいちばん身近で頼れる火力だったりします。
もちろん、迫撃砲も大きさや種類によっては、その運用難易度が異なります。例えば、自衛隊の120mm重迫撃砲は絶大な火力を誇るものの、人力輸送はできず、運搬用の車両を用意せねばなりません。
これに対して、中隊規模の火力として重宝されているのが軽量タイプの「81mm迫撃砲」になります。これは分解すれば3〜4名の隊員で運べるもので、普通科隊員(歩兵)にとっては身近な火砲になります。
- 基本性能:「L16」81mm迫撃砲
全 長 | 1.28m |
口 径 | 81mm |
重 量 | 36.6kg |
射 程 | 最大5,650m |
発射速度 | 最大20発/分 |
要 員 | 3名 |
価 格 | 1門あたり約1,000万円 |
もともとイギリスが開発した「L16」81mm迫撃砲は、約200名で構成される普通科中隊の火力を支える兵器で、旧式化した「64式」の後継として1990年代に導入されました。
重さ56kg、射程3,500mの64式迫撃砲と比べて、L16は約3割の軽量化と1.6倍の射程延伸を実現しており、アルミ合金の使用によって、同じ81mmクラスのなかでもズバ抜けて軽くなっています。
こうした改善は運搬要員の負担を減らすとともに、その分だけ一緒に運べる弾薬の増加につながりました。しかも、分解して運べば、険しい山岳地帯でも展開できるため、国土の約7割が山地の日本には適した装備といえます。
バランスの取れた威力と速度
運用は照準手と装填手、射撃距離にあわせて装薬を調整する弾薬手の3名体制ですが、通常は全体統括や指示を行う班長が加わります。
この迫撃砲の砲身はライフリング構造は採用しておらず、むしろ砲弾側に翼を付けて安定軌道を描く仕組みです。このとき、砲弾は通常榴弾のほかに、発煙弾や照明弾も選べます。
気になる威力については、着弾地点の半径30mにいる人間は死傷をまぬがれず、直撃すれば装甲車ですら破壊・大破できます。良い事例ではありませんが、誤って演習場外に着弾した事故では、40mも離れた車の窓ガラスが割れました。
また、手慣れたチームであれば、毎分20発という発射速度で撃ち込めるため、その場を乗り切ったり、連続射撃で弾幕を張らねばならない状況には適任です。逆に敵からすれば、約4kgの砲弾が真上から連続して降り注いでくるわけですから、結構「イヤな相手」といえるでしょう。
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