ドイツの新しい防空兵器
戦場における自爆ドローンが脅威を受けて、これらを防空ミサイルより安く撃墜すべく、対空戦車に再び注目が集まりました。安価なドローンに対して、毎回ミサイルを差し向けては割に合わず、費用対効果では機関砲の方が優れています。
そこで注目されているのが、ドイツの新しい防空兵器「スカイレンジャー30」です。
- 基本性能:スカイレンジャー30(砲塔のみ)
重 量 | 2.5t |
全 長 | 5.17m |
全 幅 | 2.56m |
全 高 | 1.44m |
要 員 | 2名(指揮官、射撃手) |
有効射程 | 3,000m |
発射速度 | 最大1,200発/分 |
射 角 | -10〜85度 |
価 格 | 約20億円(搭載車両による) |
スカイレンジャーはドイツのラインメタル社がつくり、30mm機関砲を備えた自律型の対空砲です。機関砲を軸にしたとはいえ、スティンガーなどの対空ミサイルにつけ替えられます。
わずかな改修を行えば、その砲塔は既存車両で運用できるため、ドイツではボクサー装甲輸送車に載せながら、復活した高射部隊に配備予定です。
「KCE-ABM」機関砲は3,000mの有効射程、1,200発/分の発射速度を持ち、新型弾を使えば、超小型ドローンさえ撃ち落とせます。
対ドローンの切り札になるか(出典:ラインメタル社)
なお、防空レーダーは360度の捜索範囲に加えて、最大20kmの探知距離を持ち、赤外線装置やレーザー測定器、高性能センサーとともに統合運用されました。このような統合・自動化により、複雑な防空システムでありながら、たった2名で運用できます。
さらに、レーザー砲搭載の「スカイレンジャー30 HEL」もありますが、こちらは開発が終わっていません。
スカイネックスとの違い
ところで、ラインメタルが開発した防空システムのうち、「スカイネックス」という兵器があります。
では、これはスカイレンジャーと何が違うのか?
少しややこしいですが、スカイネックスは「システム全体」の総称であって、拠点防空に特化した兵装セットです。具体的にいえば、スカイネックスはひとつの対空砲ではなく、自走式のMk3機関砲、けん引タイプの機関砲、短距離ミサイルなどで構成されます。
対するスカイレンジャー30とは、あくまで対空砲塔そのものを指すため、単一兵器の意味合いが強いです。ただ、両者の見た目は似ており、スカイネックスのコンセプトを流用しています。
どちらも対ドローンで有効とされるなか、スカイネックスのMk3機関砲は「35mm」と口径が大きく、システム全体の柔軟性でも上回ります。その代わり、運用体制の複雑化は避けられず、最前線の対空戦車として単独運用する場合、スカイレンジャー30に軍配が上がるでしょう。
結局は使い分ける形になり、特定地点を守るときはスカイネックス、最前線で味方を援護するならば、スカイレンジャー30という具合です。
果たして売れるのか
ドイツ軍による約50両の購入に続き、オーストリア、デンマーク、ハンガリーでも導入が決まり、それぞれの装甲車に載せるつもりです。
しかし、ライバルの「M-SHORAD(アメリカ)」と比べれば、スカイレンジャー30は機能が分かれているのに対して、M-SHORADは機関砲とミサイルを集約しました。
そういう意味では、ドイツと他の導入国での評判次第になり、その運用が今後の売れ行きを左右します。

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