なぜ石破首相のアジア版NATO構想は無理なのか?

石破茂首相 外交・安全保障
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首相に求められること

石破首相の問題意識は理解できるうえ、本質的には「正論」であったり、本当はそうすべきという部分も多いです。日米地位協定の見直し、フルスペックの集団的自衛権などは、その良き例でしょう。

ただ、一国の指導者は「自分がやりたいこと」「現在やらなければならないこと」を区別せねばならず、前者ばかりを追い求めては、国内外を含めてみんなついてきません。

これは会社でも同じで、理想に基づいて大きな風呂敷を広げても、事前の根回しもなく、いまの会社方針と合っていなければ、それはほとんど失敗に終わります。

石破首相の目指すものは、いまの情勢と照らし合わせても、果たしてそこまでの緊急性があるのか?

元来の必要性はともかく、いま求められているものを考えれば、アジア版NATOの優先順位は決して高くありません。

おそらく、安倍・岸田両政権はこのあたりが分かっていました。

安倍首相は成し遂げたい目標のうち、まずは実現できるものから着実に進めました。それがあの安保法制だったわけですが、本当はフルスペックの集団的自衛権を目指したかったはずです。

一方、岸田首相は戦争や紛争が次々と起きるなか、その状況で日本がやるべきことに淡々と取り組みました。

激動の時代が求めることを、総理として地道にこなしていたように思えます。だからこそ、目指しているものが伝わりづらく、多くの国民にはなんだかよく分からないと映ったのでしょう。

政治家は国民の代表である以上、問題意識を持って有権者の思いを代弁せねばなりません。しかし、首相として政策展開する段階になれば、その実現性や切迫性、優先順位をふまえる必要が出てきます。

言い方はキツイですが、野党や反主流派はあまり責任のない立場から、いくらでも理想を掲げられます。ところが、党内野党からいざ首相になったら、責任や他者との調整能力はもちろん、現実との妥協が求められます。

石破首相 所信表明ではトーンダウン(出典:首相官邸)

国内における諸々の障壁、アメリカを含む海外の厳しい反応を受けてか、さすがの石破首相もトーンダウンしており、あくまで将来的な構想という位置づけにしました。

それでも、ここまでみてきた諸事情をふまえると、アジア版NATOが実現する可能性は低く、少なくとも20〜30年は無理でしょう。

なによりも、アジア版NATOをぶち上げたことで、いらぬ懸念や反発を生み出してしまい、いきなり外交上のハンディを背負う事態になりました。厄介なのは、こうした構想は取り下げればよいというものではなく、一度表明してしまったからには、その不信感を拭うには時間がかかります。

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