ウクライナ支援の重要性
岸田文雄といえば、2021~2024年まで総理大臣を担い、その在任期間は戦後8番目の長さでした。
一般的にはあまり評判がよろしくなく、国民から「増税メガネ」と呼ばれたり、自民党の裏金問題などもあって、後半は支持率が低迷しました。
しかし、内政はともかく、外交に関していえば、私は90点以上の評価をつけます。
なぜか?
それは日本の「戦後」に終止符を打ち、世界における日本の印象が変えたから。
欧米の問題から世界の問題へ
まず、2022年2月にロシアがウクライナに侵攻した際、岸田政権はすぐにウクライナ支持を表明したほか、非難決議と独自制裁に取り組み、人道支援などを実施しました。
侵略された国を支援する。
これは一見すると当たり前なれど、国際社会ではそう簡単ではありません。
実際にロシアの肩を持つ国、煮えきらない態度の国が多く、対露批判・制裁に加わった国は少数です。それも大多数は欧米諸国にとどまり、これがロシアを利する構図になっています。
アジア諸国も日和見するなか、日本が直ちにウクライナ支援に回ったため、ロシアのウクライナ侵攻が欧米の問題ではなく、アジアにも関わる世界問題になりました。
ウクライナ訪問中の岸田首相(出典:首相官邸)
むろん、日本は自由主義陣営の一員である以上、侵略国・ロシアを批判するのは当然でしょう。
でも、仮に日本がロシアを恐れたり、旗幟を鮮明にしてなかったら、G7の結束にヒビが入るのはもちろん、ヨーロッパ・NATOの問題として矮小化されていました。
いまや日本はアジアのリーダーではないものの、それでも自由・民主主義の側に立ち、先陣を切って支持した意義は大きいです。
ヨーロッパへのLNG支援
このような姿勢に加えて、あまり知られていないのが、ヨーロッパへのLNG支援です。
ヨーロッパはウクライナを巡ってロシアと対峙するも、同時にロシア産の天然ガスに依存していました。もしロシアからのガスが止まれば、寒い冬を越せるかどうか分からず、欧州諸国にとって死活的問題でした。
そこで、中東から日本に向かう天然ガスのうち、一部をヨーロッパに回して融通しました。それは数十万トンの規模でしたが、実際に届けられた量ではなく、危機に手を差し伸べた事実が評価されます。
この件に欧州の首脳たちはかなりの好印象を持ち、その後は国際会議・会談の度に感謝されたそうです。
これはヨーロッパ勢に「貸し」を作り、こちらの有事でも助けてもらうきっかけになります。もし日本が戦争に巻き込まれたら、国際社会の支援が必要になり、ヨーロッパの影響力は無視できません。
助けてくれる保証はないとはいえ、外交は「ギブアンドテイク」が基本であって、そこに貸しがある・ないでは全然違います。
少なくとも、危機で欧州を助けた事実は変わらず、一定の保険としては機能するでしょう。つまり、将来のことも考えて恩を売ったわけです。
「正しい側」につく歴史的意義
この「したたかさ」はウクライナ訪問時も現れました。
2023年3月に首都・キーウを電撃訪問したとき、同じ日に中国の習近平がロシアを訪問しています。
同じ日にぶつけた結果、中露会談の話題性を削り、中国のメンツをつぶすとともに、「被害者vs侵略者」「自由主義vs権威主義」という構図を作りました。
日本は侵略された被害者の側に立ち、中国は侵略国家の側についた、との印象を世界に与えました。
日中の違いをわかりやすく対比
歴史的な意味合いで考えると、ヒトラーと握手した80年前と違って、今回は「正しい側」についたと宣伝しました。日本が被害者、中国が加害者と握手する姿は対照的に映り、その鮮明な対比が日中の道義的立場を逆転させます。
それまで過去の行為が尾を引き、「歴史」では日本が不利な状況でしたが、この件で印象は上書きされました。
岸田政権は国内をかえりみず、無条件に海外支援すると批判されましたが、かなり「狡猾」な外交をやっていたのです。

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