機動打撃力・突破力の強み
さらに、戦車の突破力(機動打撃力)は軽視できず、いまなお通用する特性です。
空を完全支配するならともかく、互いに航空優勢を確保できず、戦線が停滞してしまうと、戦車の機動打撃力が必要になります。
これは現代戦でも証明されており、ウクライナが2022年の秋に反撃したとき、機甲部隊でロシアの防衛線を破りました。2024年夏の逆侵攻作戦でも、機甲戦力でロシア領になだれ込み、敵陣の弱い部分を打通しています。
一連の作戦は成功を収めるとともに、防衛線の突破には機甲戦力が欠かせず、その中核が戦車だと再証明しました。むしろ、戦車なしでは敵陣の突破は難しく、その機動打撃力を活用できないと、いたずらに人的損害が増えます。
その後、防空火器と防護装備の拡充が進み、2026年にはドローンの効果を抑えながら、限定的な反攻作戦を成功させました。
具体的な対策を見ると、遠隔操作式の対空機銃、電子妨害装置(ジャマー)、アクティブ防護機能が加わり、随伴車両と一緒に防空網を形成します。上空では味方ドローンが飛び回り、戦車は随伴の護衛と空中援護の下、ある程度の戦果をあげました。
つまり、艦隊のような防空陣形を築き、運用環境と条件さえ整えば、一時的に機動戦は復活します。そうなると、戦車の装甲・突破力が再び役立ち、戦局を変える潜在力は健在です。
機動打通には不可欠(出典:ウクライナ軍)
逆に不要論の成立条件を考えると、対戦車戦から機動打撃まで行い、戦車の果たしてきた役割を担う、置き換えられる新兵器が必要です。
かつて戦車は騎兵の立場を奪い、新たな突撃力に成り代わりましたが、現状ではその後継が見当たりません。
戦車という兵器は化け物に近く、不整地を時速60kmで走り回り、120ミリ弾を正確に撃ち込み、真正面から敵の火力を受け止めます。加えて、最新型は高性能なセンサーを持ち、遠距離の目標をすぐに察知するなど、高い状況認識能力を獲得しました。
ある部分では戦車より優れていても、総合的に上回ることはできず、完全に代替するのは難しいです。
「とって代わる兵器はあるか?」の問いに対して、現実的な答えを出せない限り、戦車不要論には自ずと限界があります。
日本でもやはり必要
さて、日本は島国という地理的特性からか、戦車部隊にはそこまで力を入れてこず、定期的に戦車不要論が出てきました。これは陸自の戦車部隊をなくす、あるいは大幅に減らしたうえ、その人員と予算を海上・航空戦力に充てる考えです。
日本は海に囲まれている以上、大規模な地上戦は発生しづらく、他国に比べて戦車の重要性は低いです。しかし、これは相対的な評価にすぎず、離島防衛と着上陸侵攻の可能性を考えると、決して不要な兵器ではありません。
前述のとおり、もし敵が戦車部隊を上陸させたら、最も有効な対抗手段が戦車だからです。
逆にいえば、日本が戦車を保有していれば、相手も戦車を揚陸せねばならず、その分だけ侵攻のハードルが上がり、輸送・補給面での負荷が増えます。
自衛隊の戦車保有数は約300両ですが、この戦力が消えてしまったら、敵の侵攻ハードルは下がってしまい、より少ない戦力で済むだけです。
日本は海・空の防衛戦力に軸を置き、洋上での撃破を優先すべきとはいえ、敵の上陸を完全に阻止するのは難しく、予期しない場所への奇襲上陸もあり得ます。
戦車なしでも対処はできるものの、人的損害と失地面積を抑えながら、すばやく敵を追い出すならば、機甲戦力を使うしかありません。
日本は南北に縦長く、国土の2/3が山地という関係から、狭い要衝や平野部に防衛線を築かれると、敵の撃退と掃討は難しくなります。こうした正面陣地を突破して、早急な国土奪還を目指す場合、やはり戦車の機動打撃力は必要です。
日本と朝鮮半島の地形
歴史の教訓に再び目を向けると、朝鮮戦争発生時の韓国は戦車を持たず、北朝鮮の戦車部隊に対抗できないまま、あっという間に国土の大半を失いました。
ちなみに、朝鮮半島は日本と同じく、山岳地帯が多く(平地が少ない)、その韓国が戦車重視なのは参照すべきです。
さらに、アメリカでさえ約4,600両の戦車を持ち、圧倒的な航空戦力にもかかわらず、湾岸戦争では戦車戦を経験しました。その後、2000年代の対テロ戦争を挟み、ロシア=ウクライナ戦争を目撃した結果、戦車部隊を廃止するどころか、新型戦車の開発を進めています。
この動きはアメリカに限らず、欧州勢も次世代戦車に取り組み、戦車の開発意欲は廃れていません。すなわち、現代戦の教訓を受けても、世界は戦車の廃止には向かわず、逆に後継の開発に取り組んでいます。
一方、陸自は10式戦車の後継を思案しながら、戦車部隊は北海道と九州に集中配備しました。本州・四国には16式機動戦闘車があるものの、これはあくまで「動ける火砲」であって、戦車の代わりにはなり得ません。
九州と北海道は敵性国家に近く、最初に侵攻される場所です。相対的に危険度が高いにもかかわらず、そこにあえて戦車部隊を置き、その抑止力と反撃能力に期待しました。本州より侵略されやすいなか、戦車部隊の存続だけではなく、新型を集中配備した事実こそ、戦車不要論に対する反証でしょう。
もちろん、ドローン対策を施すなど、最新のアップグレードは欠かせず、従来どおりの運用はできません。
ウクライナでの運用を見る限り、多層的な防護体制を築き、ドローンの効果を減衰させれば、再び機動戦をしやすくなり、戦車の有効性は復活します。
結局のところ、活躍の幅が減ったといえども、代わり得る存在は見当たらず、強みとメリットが弱点を上回る限り、戦車は戦場から姿を消しません。


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