なぜGDP比で2〜3%?日本の防衛費の推移とその行方

札束の画像 自衛隊
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関連予算も含む

実際に3.5〜5%を目指すとなると、それは15兆〜25兆円という金額になり、国家財政的には悪夢に等しいです。防衛増税をかけたとしても、さすがに25兆円は無理があって、現状では国民生活が耐えられません。

では、どのぐらいが現実的なのか?

たとえ3〜5%の防衛費を計上しても、高い経済成長を実現していれば、成長率が防衛費の伸びを上回り、財政的にも国民的にも耐えられます。本来は経済成長で国を富ませて、それに合わせて防衛費を増やすのが定石です。

実際のところ、冷戦期は1%台だったにもかかわらず、日本経済が右肩上がりだったため、防衛費の「実額」は増え続けました。ただ、いまの日本経済では期待できず、とても増額分をカバーできません。

そうなると、結局は負担増しかないですが、ここでポイントになるのが、先述の関連予算です。

ひと言で防衛費といっても、それは防衛省以外の予算も含み、広い意味での「安全保障予算」といえます。たとえば、約9.9兆円のうち、防衛省分は約8.5兆円にあたり、残りは海上保安庁の予算、安保関係の公共事業費などです。

戦力展開には道路と港湾、空港が必要ですが、その整備費を「関連経費」として盛り込み、防衛費として数えてしまうわけです。防衛にさえ結びつければ、防衛費を実態以上にカサ増しできるほか、各種インフラを整えられます。

なにやら「セコイ」とはいえ、一応はアメリカの増額要求に沿い、老朽化した基盤インフラを更新したり、電力通信網の強化とデジタル化など、国土強靭化も同時に進められる手法です。

しかも、ただ単に防衛費を増やすよりも、インフラ整備は国民の理解を得やすく、国内政治的には説明がつきやすいです。

そもそも、防衛とインフラは切り離せず、軍隊が道路や電力・通信網を使う以上、その維持整備は広い意味での「安全保障」にあたります。なお、この考えはNATOも採用しており、先ほどの5%目標はインラフ関連を含みます。

一方、防衛省単体の金額をみると、沖縄での基地対策費用、米軍再編の費用、思いやり予算などを含み、自衛隊にかかる費用だけではありません。

さらにいえば、日本は対外援助の一環として、他国に能力支援や装備品供与を行い、外交・安保関係を深めてきました。フィリピンがその代表例ですが、こうした支援は日本の安全保障のみならず、地域全体の安定化に寄与することから、アメリカにとっても有益です。

このように純粋な防衛費に加えて、米軍関連の経費、海上保安庁の予算、インフラ整備費、特定の海外援助を合わせれば、見かけ上の数字は一気に伸び、3.5%の目安も到達可能でしょう。インフラ整備費の計算次第では、数値上は5%もクリアできるかもしれません。

その場合、表面上は数値目標を達成しながら、インフラ整備で国土強靭化に取り組み、それを使う自衛隊も活動しやすくなるなど、まさに一石三鳥の方策といえるでしょう。

本来あるべき姿とは

ところで、本来の防衛費はGDP比にとらわれたり、1〜2%という数値目標ではなく、あくまで「必要性」に応じて、相応の金額をあてるべきです。

まずは安全保障情勢と脅威認識に基づき、必要な防衛力を割り出さねばなりません。そして、国家財政と照らし合わせながら、その実現性を巡って議論を行い、必要分の予算をあてがう、というのが本来の姿です。

近年の防衛費増額は望ましいものの、どうも数値目標がひとり歩きして、順序が違っていたり、「あるべき論」が抜けている感が否めません。

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