ロケット爆薬を飛ばす
ロシア=ウクライナ戦争で双方が地雷原を敷き、その有効性が再証明されたものの、その処理方法も課題として浮上しました。防衛上は有利にもかかわらず、いざ反転攻勢に転じると、今度は敵の地雷原を突破しないといけません。
それゆえ、処理装備も改めて脚光を浴び、ドイツのケイラー除去車など、戦闘工兵車両に期待が集まりました。
日本でも92式地雷原処理車を使い、地雷原突破の切り札とされるなか、あまり知られていないのが、陸上自衛隊の「70式地雷原爆破装置」になります。
- 基本性能:70式地雷原爆破装置
発射機 | ロケット弾 | 爆薬ケーブル | |
重 量 | 18kg | 24kg | 24kg |
全 長 | 1.4m | 0.75m | 17m |
直 径 | – | 0.15m | – |
射 程 | – | 550m | – |
これは1970年に調達が始まり、普通科による小隊突撃を支援すべく、地雷原に穴を開けるものですが、意外にも日産自動車が開発しました。
92式地雷原処理車と同じく、ロケットで爆薬を飛ばしながら、地雷を爆破処理する仕組みとはいえ、92式のような大型装備ではなく、持ち運びできる組立て式です。
総重量200kg超えの装置は発射機のほか、ロケット弾と爆索(爆薬付きのケーブル)から成り、6〜8名で分担輸送しながら、地雷原の手前で組み立てます。
ただし、いきなり設置するわけではなく、あらかじめ測量を行い、正確な距離を把握せねばなりません。
この準備時間に最短15分はかかり、地雷原の手間まで行く点を考えると、リスクの高い作業といえます。当然、敵も黙って見過ごすはずがなく、準備中に攻撃を受けやすいです。
また、長い爆薬ケーブルは風に影響されやすく、状況次第では着地点がズレてしまいます。成功率は90%と言われるも、逆に10発に1発は失敗する計算です。このあたりは気象条件に基づき、測量時に風速を考慮して修正するなど、現場隊員の力量も問われてきます。
小隊用の道を切り開く
気象の影響を受けるとはいえ、爆破時には大きな爆煙が上がり、長さ100m×幅50cm以上の突破口を開きます。
これは人が通る分には問題なく、小隊規模の突撃には十分な通路です。75式ドーザなどを使えば、道幅は車両通行が可能なレベルに広がり、最初のきっかけをつくるのに役立ちます。
70式地雷原爆破装置は普通科連隊のみならず、各師団の施設大隊にも配備されており、一部は73式装甲車、あるいは96式装輪装甲車に搭載されました。この場合、人力輸送よりはすばやく運び、そのまま車両から投射できるため、人的損耗のリスクを軽減できます。
ほかにも、ひとり向けの小型携帯版もあって、「携帯障害処理機材」として知られています。こちらの製造はIHIエアロスペースが担い、主に対人地雷を除去するべく、単独で投射・爆はする簡易タイプです。
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