自衛隊も使うはずだった?イーグル装甲車の性能について

イーグル装甲車 陸上自衛隊
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スイス産の軽装甲車

陸上自衛隊が軽装甲機動車を使うなか、その後継に向けた検討作業が進み、一時はオーストラリア製の「ハーケイ」、スイス産の「イーグル」に絞られました。

そんなイーグルはどのような性能を誇るのか?

  • 基本性能:イーグル軽装甲車(最新型)
重 量 4.8t
全 長 5.37m
全 幅 2.16m
全 高 2m
乗 員 最大5名
速 度 時速110km
行動距離 約650km
価 格 1両あたり約2.5億円

イーグルはモクワ社が1990年代に作り、スイス陸軍だけではなく、ドイツとデンマークも使う軽装甲車ですが、登場以降は何度か改良されており、いまは「イーグルV」が最新型になりました。

初代イーグルの開発にあたって、足回りはあのハンヴィーを参考にしながら、イーグルⅢまで受け継がれました。その後、同社のトラックと同じ物に変わり、最新型は4輪駆動・6輪駆動の2つを選べます。

基本的には装甲偵察車両として使い、機関銃などを取り付けられるほか、全天候型の赤外線暗視装置も設置できます。また、車体後部には装備品を積み込み、最大2トンの荷物を搭載可能です。

一方、イーグルは防弾性能が高く、鋼板と防弾ガラスを組み合わせながら、全方向からの直撃弾を想定しました。その結果、約30mの至近距離でも7.62mm弾を防ぎ、重機関銃の攻撃や砲弾の破片、爆発物の直撃から乗員を守り切ります。

さらに、地雷と即席爆弾に対処するべく、車体下部は耐爆仕様になり、爆風への強い耐性を確保しました。この高い防弾性能とともに、イーグルは優れた空輸性を持ち、C-130輸送機には2両が収まり、離島防衛時の機動展開に適しています。

比較・検討したが

イーグルはスイス軍の556両を始めとして、デンマークが219両、ドイツが750両という販売実績を誇り、イラクとアフガニスタン戦争にも投入されました。現地では良好な防弾性能のみならず、期待通りの耐爆性能を発揮しており、攻撃から乗員を守りました。

では、防衛省の比較・検討はどうだったのか?

まず、単純に防弾性能を比べると、イーグルはライバル(ハーケイ)を上回り、サイズ的にも少し小さいです。ただし、想定価格はハーケイの方が安く、実際は量産コストなどで変わるにせよ、現状ではイーグルは高価な印象が否めません。

それ以外の点でいえば、両者に明確な差は感じられず、どちらを選んだとしても、軽装甲機動車の後継は問題なく務まります。

軽装甲機動車を置き換える以上、2,000両以上の大型商談になるため、ある程度は政治的思惑が絡み、その要因も考慮せねばなりません。たとえば、日豪準同盟という視点で考えると、ハーケイの購入は安保関係の強化につながり、新型FFMを採用したオーストラリアへの「返礼」になるでしょう。

逆に防衛産業の視点に立てば、三菱重工業がハーケイを、丸紅エアロスペースがイーグルを推す構図です。

三菱重工は防衛産業の筆頭にあたり、近年は防衛力の増強にともなって、多数の受注案件に恵まれてきました。受注バランスをふまえると、あえて丸紅の提案を選び、防衛産業の均衡を取る可能性がありました。

ところが、両者とも軽装甲機動車より値段が高く、増額された予算をもってしても、防衛省は「高すぎる」と感じたようです。その結果、一旦は選定作業を脇に置き、防弾化した民間車両の導入を模索します。

トヨタの「ランドクルーザー」、いすゞの「D-MAX」が候補に上がるなか、民生車の改造で調達価格を抑え込み、「質<量」と割り切ったようです。

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