滑空する誘導爆弾
ミサイルと爆弾を比べると、前者は高価で命中率が高く、後者は安いが命中精度と射程で劣る、というのが一般的な認識でしょう。
ところが、爆弾に誘導機能と翼を付けると、それは滑空飛行する誘導弾に変わり、本来の弱点を一気に改善できます。こうした滑空爆弾といえば、ロシア=ウクライナ戦争でロシア軍が使い、ウクライナに対する空爆で戦果をあげてきました。
その価値が現代戦で再認識されるなか、アメリカでは滑空式誘導爆弾の配備が進み、日本も反撃能力を確保するにあたり、「GBU-53/B ストームブレイカー」に興味を持ちました。
- 基本性能:GBU-53/B ストームブレイカー
| 重 量 | 約93kg |
| 全 長 | 1.76m |
| 直 径 | 18cm |
| 弾 頭 | 約48kg(成型炸薬弾) |
| 射 程 | 約100km |
| 価 格 | 約3,000万円 |
ストームブレイカーは「SDB-2」とも呼び、小直径爆弾2号の名前のとおり、約100km先まで届く200ポンド(90kg)の誘導爆弾です。その開発は2006年に始まり、2015年に初期生産を開始したものの、実戦配備は2020年になりました。
F-15E、F-35などの戦闘機から投下後、胴体に格納してある滑空用の翼が開き、そのままGPS誘導で目標付近まで向かいます。データリンクで飛行経路の修正を行い、最後は赤外線画像機能とともに、自身の搭載レーダーで捕捉しながら、精密攻撃を加える仕組みです。
このとき、各センサーの情報を統合できるほか、あらかじめ半自律モードを選択すると、目標に対して優先順位を付けてくれます。
そして、複数の誘導手段の組み合わせた結果、高い命中率を実現したのみならず、悪天候や敵の電波妨害に強くなりました。たとえ眼下が雲に覆われていても、車両のような移動目標であっても、高い誘導・識別能力で攻撃可能です。
弾頭部分には成型炸薬を詰め込み、爆風と破片の両方でダメージを与えるため、試験では非装甲車両や建造物はもちろん、戦車のような装甲車両も破壊してきました。
ロシア軍の滑空爆弾を見ると、まさに遠くの空から爆弾が降り注ぎ、一帯を爆撃しながらも、一部は高精度で当たる様子でした。実際に攻撃を受けた兵士によると、ミサイルのように迎撃が難しく、自爆ドローンより対処しにくいそうです。
コスパ良い選択肢
1発あたり約3,000万円とはいえ、1億円の巡航ミサイルを使うよりは安く、約100kmの最大射程をふまえると、長距離火砲(榴弾砲)とミサイルの間にあたり、両者の火力ギャップを埋める存在です。
最近はロケット推進弾を使えば、榴弾砲でも約60〜70km先まで届き、HIMARSなどの高機動ロケット砲、自爆ドローンはもっと遠くまで狙えます。これら兵器に混ぜて使えば、打撃力の多様化・多層化が進み、運用上の選択肢が広がるでしょう。
なお、F-15E戦闘機には最大28個、F-35とF22には最大8発が収まり、後者はステルス性を損なうことなく、内蔵式のウェポンベイに搭載可能です。これが外付けて搭載する場合、F-35の最大搭載数は24個に増えるものの、その分だけステルス性・機動性は落ちます。
F-15Eへの搭載(出典:アメリカ空軍)
アメリカでは空軍向けだけではなく、海軍のF/A-18戦闘機向けに生産を行い、2025年にはイエメンのフーシ派に対して、ストームブレイカーを初めて投入しました。
具体的な戦果は不明ながらも、前述の費用対効果の良さをふまえて、すでにオーストラリア・ドイツ・イタリアなど6カ国が買い、東アジアでは日韓両国が導入を検討しています。韓国は対北朝鮮を念頭に置き、日本は離島奪還時に用いる感じです。
日本はF-35で試験運用するべく、まずは28発を調達するつもりですが、費用対効果と選択肢の拡大、他国との相互運用性を考えると、採用にふみ切るのではないでしょうか。


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