イランとの戦争で見えたアメリカの強さと限界

外交・安全保障
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国際法違反の軍事行動

2026年2月末、アメリカは核開発を阻止する名目の下、イラン攻撃にふみ切ってしまい、ペルシャ湾周辺が戦場となりました。

イランの指導部が初日で吹き飛び、トランプは戦況を楽観視したものの、相手の抵抗が予想以上に長引き、対イラン戦争は泥沼化しました。

当初は4〜5週間で作戦が終わり、「特別軍事作戦」で済むべきところ、すでに5ヶ月以上も続いています。一時休戦で合意したあと、再び攻撃の応酬が続き、現在も出口は見えません。

そもそも、ロシアのウクライナ侵攻と同じく、アメリカの行為は国際法違反であり、本来は許されるべきではありません。

ところが、米露中以外の非力さ、国連の無力感が示すとおり、近年の世界では力の論理が働き、以前ほど「法による支配」は効きません。

さまざまな国が非難すれども、ロシアと同様にアメリカを阻止できず、結局は「やったもん勝ち」になりました。いまや日本・ドイツ・イタリアが法の支配を叫び、まるで旧枢軸国と旧連合国が逆転したようです。

日本は日米同盟に依存する以上、表立ってアメリカを批判しづらく、トランプ相手はなおさらです。それでも、法の支配を遵守する側に立ち、それを使って中国と対峙する限り、いくら唯一の同盟国でも、今回の行為は許容できません。

戦略目標は達成できず

熾烈な攻撃にもかかわらず、アメリカはイランの政権転覆はおろか、核開発すら阻止できていません。関連施設に空爆を加えて、進捗を大きく遅らせたものの、その開発能力を完全には奪えず、イラン側の「意志」も健在です。

今後の交渉次第とはいえ、本来の戦略目標は達成しておらず、トランプにとっては不本意な結果です。

いくら相手を空爆しても、最終的に屈服を求めるなら、地上部隊を派遣するしかなく、これはアメリカにはできません。なぜなら、アメリカ社会はイランなどに比べて、自国民の損害を忌避する傾向が強く、特に戦死者数には敏感だからです。

歴史をふり返ると、爆撃だけで屈服した例は少なく、損害受容度が低い限り、現時点で打開策はありません。

逆にイランは体制を守り抜き、アメリカに交渉を強いたことから、現状では敗北を回避しました。海・空戦力は壊滅したものの、大規模な地上戦力は残っており、さすがの米軍も地上侵攻はできません。

この地上戦力が健在である限り、アメリカは最後の一手を決めきれず、戦争目的は達成できないでしょう。

そもそも、戦争とは政治の延長、外交の手段にすぎず、何らかの目的を実現するもの。

この点をふまえると、アメリカは政治目的を達成できず、戦術的には優勢なれども、戦略的には勝利していません。むしろ、世界中の批判を浴び、再び同盟国の不信を買い、国内世論の分断を深めました。

戦場で見せた戦術的強さ

他方、アメリカは戦場では圧倒的優位に立ち、イランの軍事力を壊滅させてきました。アメリカは原子力空母3隻、航空機200機以上を送り込み、航空基地の戦力を合わせると、イラク戦争以来(2003年)の展開規模です。

初戦から敵の防空能力を奪い、絶対的な航空優勢の下、イラン各地の基地・拠点を攻撃しています。イランは連日の空爆を受けて、海・空戦力の大部分を失い、真正面からは米軍に挑めません。

そのため、非対称戦で対抗するしかなく、中東の米軍基地にミサイルを撃ち込み、ドローンで空母艦隊を攻撃しています。ただ、早期警戒管制機(駐機中)の破壊を除けば、戦局全体への影響は限定的であって、アメリカの優勢は変わりません。

通信施設への空爆(出典:米中央軍)

イラン軍の戦死者3,000〜4,000人、負傷者10,000人以上に対して、アメリカの損害は事故を含めても、死者19名・負傷者630名にとどまり、恐るべき比率(キルレシオ)です。

たしかに、ミサイルとドローンは厄介ですが、アメリカは卓越した防空網を使い、ほとんどを撃墜してきました。

断続的な攻撃にもかかわらず、空母打撃群の損害はなく、逆に激しい防空戦で実戦経験を積み、いまや最も経験値の高い艦隊です。戦闘機は出撃するたびに、新たな撃墜マークが加わり、イージス艦もフル稼働しながら、その防空能力を証明しました。

また、イランがホルムズ海峡を封鎖すると、優勢な海上戦力で逆封鎖を行い、イラン関連の船を追い返すなど、自慢の海軍力を発揮しています。

空母からの出撃(出典:米海軍)

さらに、アメリカは従来型のミサイル、誘導爆弾、戦闘機、爆撃機に加えて、多数の新型兵器を注ぎ込み、イラン全体が実験場と化しました。

最新鋭のミサイルはもちろん、ドローンや無人水上艇を使い、これらをAIシステムで統合運用したあと、実戦データを持ち帰るわけです。

一方的な攻撃が目立つとはいえ、イランは軍事的には弱くはなく、兵器の独自開発に取り組み、ロシアと中国から多くの武器を買い、中東屈指の軍事大国でした。

ところが、1月のベネズエラ奇襲時と同じく、中露の兵器システムは米軍には敵わず、再び性能の差が露見しました。序盤の電子戦で機能不全に陥り、本来の能力を発揮できないまま、次々と空爆で破壊されました。

これは中露製が劣悪というよりは、単にアメリカの装備・能力が上回り、まさに相手が悪かったといえます。

航空優勢を確保(出典:米空軍)

なお、同じ戦略目標が未達成といえども、ウクライナ侵攻とは違って、戦術的には米軍の強さが目立ち、ロシア軍との差が明白になりました。

少なくとも、アメリカはイラン側の戦力を叩き、戦場での優位性を築きました。対するロシア軍といえば、いまだ航空優勢すら確立できず、米軍とは真逆の損害比率です。

指導部(トランプ政権)はともかく、米軍は高い作戦能力・実行力を誇り、このあたりは「さすが」でしょう。

台湾侵攻を企てる中国も、精密誘導兵器の威力、統合運用作戦の効果、空母打撃群の脅威を見て、米軍の強さを再認識したはずです。

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