イランとの戦争で見えたアメリカの強さと限界について

アメリカの空母打撃群 外交・安全保障
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新兵器を次々と投入

さらに、アメリカは従来型のミサイル、誘導爆弾、戦闘機、爆撃機に加えて、多数の新型兵器を注ぎ込み、イラン全体が実験場と化しました。

最新鋭のミサイルはもちろん、ドローンや無人水上艇を使い、AIシステムで統合運用したあと、実戦データを持ち帰る仕組みです。

一方的な攻撃が目立つなか、イランは別に軍事的に弱くはなく、独自の兵器開発に力を注ぎ、ロシアと中国から多くの武器を買い、中東屈指の軍事大国でした。

ところが、1月のベネズエラ奇襲時と同じく、中露の兵器システムは米軍には敵わず、再び性能の差が露見しました。序盤の電子戦で機能不全に陥り、本来の能力を発揮できないまま、次々と空爆で破壊されました。

これは中露製が劣悪というよりは、単にアメリカの装備・能力が上回り、まさに相手が悪かったといえます。

航空優勢を確保(出典:米空軍)

なお、同じ戦略目標が未達成といえども、ウクライナ侵攻とは違って、戦術的には米軍の強さが目立ち、ロシア軍との差が明白になりました。

少なくとも、アメリカはイラン側の戦力を叩き、戦場での優位性を築きました。対するロシア軍といえば、いまだ航空優勢すら確立できず、米軍とは真逆の損害比率です。

指導部(トランプ政権)はともかく、米軍は高い作戦能力・実行力を誇り、このあたりは「さすが」とでしょう。

台湾侵攻を企てる中国も、精密誘導兵器の威力、統合運用作戦の効果、空母打撃群の脅威を見て、米軍の強さを再認識したはずです。

貴重な資源の無駄使い

しかし、課題がないわけではなく、いくら米海軍が優勢であっても、地対艦ミサイルと小型高速艇、ドローン群が待ち構える以上、狭いホルムズ海峡には突入できず、逆封鎖にとどめてきました。

銀河英雄伝説で例えると、イゼルローン回廊に機雷をバラ撒けば、優勢な帝国軍でも数の利を活かせず、回廊の外にとどまっている状態です。

多大な犠牲を覚悟しながら、狭い回廊を強硬突破すれば、勝利の可能性は出てきますが、現実のアメリカは銀英伝の帝国と違って、リスク回避の傾向が強い民主国家です。

仮にイランの封鎖を突破できても、狭い海峡では機動力を活かせず、損害は避けられません。これは地対艦ミサイル、ドローンの有効性が働き、改めて非対称戦が効力を発揮しました。

自由に空を飛び回り、戦術的優位は疑いないものの、自国民の損害を恐れるあまり、最終的な決め手には欠き、これがアメリカの限界といえます。

さらに、この不毛な戦争で6兆円以上の戦費、大量の弾薬・誘導兵器を浪費したあげく、対中国用の備蓄が激減しました。

トマホーク巡航ミサイル、パトリオット迎撃ミサイル、ATACMSは言うまでもなく、最新のPrSMとJASSMまで注ぎ込み、本国の在庫が払底しています。

本来は対中国用に温存すべきところ、数年分の在庫を無駄にしたため、またしても備蓄せねばならず、この瞬間に台湾有事が起きたら、弾薬不足で中国を阻止できません。もっとも、中国も台湾侵攻の準備が整わず、まだ時間的猶予はありますが。

いずれにせよ、今回の対イラン戦争は国際法違反、不要不急の暴挙でしかなく、アメリカの戦略的立場を低下させました。これまでは曲がりなりにも、国際法と国際秩序を守る側に立ち、その大義名分で正当性を担保していました。

その結果、アメリカは「道義的な権威」を保ち、これが同盟ネットワークとともに、戦略的優位性をもたらしたほか、中国・ロシアと対照的に映りました。

それを今回の戦争で失い、対中国戦の弾薬も浪費した以上、政治目的の未達成と合わせると、アメリカは大きな損をしました。

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