自衛隊にはない、米海兵隊のAH-1Zヴァイパーとは?

AH-1Zヴァイパー攻撃ヘリ アメリカ
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より軽く、強く、整備しやすく

アメリカ海兵隊は「殴り込み部隊」という役割を果たすべく、独自の戦車や航空部隊を持ち、高い自己完結性を確保してきました。

しかし、近年は戦車部隊をなくしたり、生存性の高い機動兵器を重視するなど、従来の地上戦から対中国に向けた島嶼戦に回帰中です。そんななか、戦闘攻撃ヘリは廃止されず、現在は「AH-1Z」という機体に更新されました。

では、このAH-1Zはどんなヘリなのか?

  • 基本性能:AH-1Zヴァイパー
全 長 17.75m
全 高 4.37m
乗 員 2名
速 度 時速296km(最高時速400km)
航続距離 約700km
高 度 約6,100m
兵 装 20mm機関砲×1
対戦車ミサイル、対地爆弾、
ロケット弾、対空ミサイルなど
価 格 1機あたり約5億円

AH-1Zは「ヴァイパー(毒ヘビ)」という名前を持ち、古くなったAH-1Wを置き換えるべく、2010年から配備が始まりました。余談ですが、このAH-1シリーズは歴史が古く、陸上自衛隊も「AH-1S」という派生型を運用中です。

見た目はAH-1Wとほぼ変わらないものの、機体の95%近くが新設計、改良されているため、その中身は全く異なります。

機体そのものは新しい複合素材で軽くなり、運動性能を飛躍させながらも、強度と整備性も高めました。

たとえば、胴体部分はアルミ複合材、コックピットのガラスも強化樹脂ガラスで軽量化と強度を両立しています。その結果、全体的には12.7mm弾に耐えられるほか、コックピット部分は墜落に備えた衝撃吸収構造になりました。

また、ローター・ブレードが4枚へ倍増したにもかかわらず、部品数が減って整備しやすくなり、23mm弾まで耐えられる防弾性能が与えられました。ちなみに、海兵隊のヘリは海軍の強襲揚陸艦で運用されるため、ブレードを半自動で折りたためたり、塩害に強い設計になっています。

AH-1Zと強襲揚陸艦AH-1Zと強襲揚陸艦(出典:アメリカ海軍)

一方、高出力の新型エンジンに変えたところ、航続距離の20%延伸に加えて、兵器搭載量も2倍になりました。しかも、このエンジン部分でもメンテナンスの手間がいろいろ省かれており、不具合を自動検知するシステムなどが採用されています。

先のローター部分と合わせれば、定期メンテナンスの必要性が大きく減り、AH-64アパッチと比べた場合、その運用費用を30〜40%も抑えました。

パイロット視点でいえば、コックピットはディスプレイを使ったデジタル式になり、計器情報や飛行状況、GPSマップ、敵の動向を瞬時に把握しやすくなりました。

そして、操縦システムも従来の油圧式だけでなく、新たにデジタル制御装置が加わり、自動アシスト機能を通した安定飛行、微調整が可能です。

つまるところ、AH-1Zは軽くて、頑丈のみならず、その整備性や操縦安定性も高めた機体になりました。

高い戦闘攻撃力と防御力

では、攻撃ヘリに欠かせない戦闘力はどうなのか?

まず、機首部分には20mm機関砲を持ち、パイロットが被るヘルメットに連動しながら、目標の動きを自動計算してロックオンできます。目標を視線にとらえるだけで、照準を合わせられるというわけです。

ただし、毎分1,500発の発射速度を誇りながらも、750発程度しか搭載しておらず、実際にはあっという間に撃ち尽くしてしまいます。

AH-1Zヴァイパー攻撃ヘリAH-1Z攻撃ヘリ(出典:アメリカ海兵隊)

そこで頼りになるのが、機体の左右に取りつける各種兵装です。

たとえば、ヘルファイア対戦車ミサイルならば、最大16発も搭載できるほか、マーベリック対地ミサイル、有線誘導式のTOW対戦車ミサイルも使えます。さらに、焼夷弾や燃料気化爆弾、対レーダー・ミサイル、ロケット弾ポッドなど、あらゆる兵器に対応しました。

これら兵器がその威力を発揮するには、高性能は射撃管制システムが欠かせず、AH-1Zには外部状況に応じた4段階の捕捉能力、複数の目標に対する自動追尾能力が与えられています。

その最大探知距離は約35kmと言われており、約8〜10kmで目標を識別して、脅威度に基づく優先順位をパイロットに提示するそうです。

また、陸軍の運用思想と違って、海兵隊は攻撃ヘリも空対空戦闘を行うべく、空対空ミサイルの搭載や自己防御機能を拡充させました。ミサイル警報装置と赤外線妨害機能、チャフ・フレア発射器はもちろん、排熱抑制装置や電子戦システム、自動ジャミング機能も備えています。

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