ウクライナ侵攻で完全停滞
ロシアは日本の隣国にもかかわらず、中国・韓国と比べて関係性が薄く、友好関係とはいえません。北方領土問題は言うまでもなく、冷戦期の対峙とロシアの軍事戦略をふまえると、むしろ仮想敵と言っていい存在です。
冷戦終結後は関係改善が進み、一時は友好的な雰囲気が流れたものの、ウクライナ侵攻で完全に停滞しました。侵攻に対する制裁にともなって、日本は「非友好国」に指定されたほか、両国の交流は官民レベルで途絶えました。
そもそも、日露間は基本的な認識と価値観が違い、地政学的には関係改善が困難です。
たとえば、日本では北方領土問題が真っ先に浮かび、これが最重要課題となってきました。一方、ロシア側の主題は領土問題ではなく、日米同盟がもたらす地政学上、安全保障の問題です。
ロシア側から見たとき、日本はアメリカの同盟国であって、米軍基地を置いている国です。アメリカの同盟国である以上、日本は間接的な敵にならざるをえず、初めから関係深化には限界があります。
さはさりながら、アメリカとの同盟を捨ててまで、ロシアを選ぶメリットはありません。もしロシア側に付いた場合、核の傘がアメリカからロシアに変わり、今度はモスクワの庇護の下、アメリカと敵対するだけだからです。
日米同盟という大黒柱を失う代わり、ロシアから得られるものは少なく、歴史に残る大失策になるでしょう。ロシアは同盟相手のシリア、アルメニアを守れず、同盟国としての信用は失墜しました。
経済に視点を移しても、ロシアに期待できるメリットと比べて、アメリカとの対立で失う利益の方が大きく、結果的には「損」するだけでしょう。オホーツク海の漁業権、天然資源の確保では利点があれども、その代償で失うものが大きすぎるうえ、アメリカとの同盟を維持していれば、天然資源は海路で問題なく輸入できます。
なお、ウクライナ侵攻でも分かるとおり、日露両国は価値観を共有しておらず、基本的な部分で一致していません。日本が国際秩序の維持、法の支配に基づき、武力による現状変更に反対する以上、平気で隣国を攻めるロシアの行為は許しがたいものです。
しかも、国連の常任理事国にもかかわらず、占領地で組織的な戦争犯罪を行い、その非人道的な側面が露呈しました。
仮にも平和国家を自認するならば、このような侵略国家にすり寄り、仲良くするのは自らの理念に反します。そんな姿勢は平和主義でも何でもなく、憲法前文にある精神に対する背信行為です（以下を参照）。
「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」
平然と戦争を仕掛ける国と仲良くすれば、他国にどう映るのか？
仮に経済交流に限ったとしても、それはロシアの外貨稼ぎにつながり、ウクライナ侵攻の戦費になるだけです。
それが日本の理念に適う姿勢なのか？
現在のロシアと仲良くする場合、これを自問せねばなりません。
自由主義陣営に属する日本
日本は国際秩序・自由主義の恩恵を受けており、それに挑戦する側ではなく、守る側に立つのが筋です。そして、それは実質的には自由主義陣営に加わり、アメリカとの同盟をふまえれば、西側諸国の一員ということになります。
もちろん、アメリカを含む西側も「品行方正」からは遠く、掲げる理念と実際の行動に矛盾が生じてきました。
しかしながら、どっちかを選ばないといけないなら、日本はどちらに身を置くべきか？
たとえ建前であっても、自由・民主主義・人権を唱える西側諸国。
それすら掲げず、権威主義体制の下、抑圧を行う中露の陣営。
あるいは、アメリカ人とロシア人（または中国人）のどちらになりたいか？
これは国際政治上の「価値」を測るものですが、たとえどちらの質問をしても、大多数は前者を選択するでしょう。
なぜならば、前者は表向きは自由主義の価値観を持ち、現代日本人の生き方や望む社会に近いから。
結局、日本はロシアが嫌う西側諸国にあたり、基本的な価値観を共有しておらず、現体制下では関係発展が望めません。
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