ロシアと組む意味はない
さりとて、アメリカとの同盟を捨てる、自由主義陣営と距離を置いてまで、ロシアを選ぶメリットはありません。
もしロシア側に付いた場合、核の傘がアメリカからロシアに変わり、今度はモスクワの庇護の下、アメリカと敵対するだけだからです。
日米同盟という大黒柱を失う代わり、ロシアから得られるものは少なく、歴史に残る大失策になるでしょう。ロシアは同盟国のシリア、アルメニアを守れず、同盟相手としては失格です。
頼みの軍事力は損耗が激しく、自慢の兵器は西側の装備に比べると、性能で劣ることが露呈しました。もはや核兵器を拠り所にするしかなく、「大きな北朝鮮」と揶揄されています。
経済力はトップ10にすら入らず、あるのは天然資源ぐらい。
オホーツク海の漁業権、天然資源の確保では利点があれども、その代償で失うものが大きすぎるうえ、アメリカとの同盟を維持していれば、資源は海路で問題なく輸入できます。
政治・軍事・経済のどれをとっても、ロシアに期待できるメリットと比べて、アメリカとの対立で失う利益の方が大きく、結果的には大損するだけでしょう。
さらに、ウクライナ侵攻でも分かるとおり、ロシアとは価値観を共有しておらず、我々とは明らかに異質の存在です。
日本が秩序の維持、法の支配に基づいて、武力による現状変更に反対する以上、平気で隣国を攻めるロシアは許容できません。
しかも、国連の常任理事国にもかかわらず、占領地で組織的な戦争犯罪を行い、その非人道的な側面が露呈しました。
仮にも平和国家を自認するなら、こうした非道な侵略国家にすり寄り、仲良くするのは自らの理念に反します。そんな姿勢は平和主義でも何でもなく、憲法の精神に対する背信行為です(以下を参照)。
「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」
平然と戦争を仕掛ける国と仲良くすれば、他国にどう映るでしょうか?
経済交流に限ったとしても、ロシアの外貨稼ぎの手段になり、ウクライナ侵攻の戦費になるだけです。
それが日本の理念に適う姿勢なのか?
現在のロシアと仲良くするなら、これを自問せねばなりません。
なお、このような話になると、「中立」を提案する声が出てきますが、日本は米中露が利益が角逐する場所に座り、中立化なんてほぼ不可能です。
そもそも、中立は双方の味方ではなく、双方を敵に回す行為に等しく、どちらも跳ね除けられる実力、相当な覚悟が欠かせません。
冷戦時代に逆戻り
日本が自由主義陣営に属する限り、ウクライナ侵攻中のロシアとは対立関係になりますが、これは冷戦期に逆戻りしただけです。
長らくソ連が仮想敵国だったため、自衛隊は冷戦後も対ロシアを意識してきました。最近は南西シフトが進んだとはいえ、自衛隊は北方警戒を解いておらず、対ロシア戦も想定しています。
ただ、中国と北朝鮮の脅威を抱えるなか、ロシアと真正面から敵対する余裕はなく、対中国に集中したいのが本音です。
一方、ロシアはウクライナで泥沼戦争に陥り、対日侵攻の余裕はありません。北方領土からも守備隊を引き抜き、対日用の海軍歩兵旅団が壊滅するなど、極東の陸軍戦力も潰してきました。
日本周辺に爆撃機を飛ばしたり、軍事演習は実施していますが、日本への侵攻能力はなく、あくまで威嚇のポーズにすぎません。太平洋艦隊と航空戦力が健在とはいえ、まともな上陸戦力が見当たらず、揚陸能力も1個連隊分ぐらい。
太平洋艦隊の揚陸艦は4隻しかなく、他の揚陸艦艇をかき集めても、北海道上陸なんて無謀すぎます。ウクライナで数隻の揚陸艦を失い、黒海方面が逼迫している以上、なおさら極東方面には回せません。
軍事侵攻はともかく、NATO諸国に対する挑発のように、ドローンを侵入させたり、恫喝目的の限定攻撃はあり得ます。
近年の中露関係を加味すると、台湾有事ではロシアも連動して動き、北方での威嚇行為を通して、日米の戦力分散を狙うでしょう。本格的な侵攻はできずとも、恫喝で注意を逸らしてくれば、日本は南西に集中できません。
中露離間という幻想
では、中露連携に楔を打ち込むべく、日本はあえてロシアに接近すべきか?
日本では「対中国でロシアと連携すべき」という声がありますが、ロシアからすれば、中国と対峙するのは不利益しかなく、極東ロシアを中国に飲み込まれかねません。
このあたりは以前の記事をお読み下さい。

北方領土交渉の危うさ
さて、日露関係といえば、北方領土抜きには語れず、この問題が存在するからこそ、平和条約を締結できていません。
日本は北方領土交渉において、経済協力を交渉材料にしながら、四島の返還を期待してきましたが、根本部分で認識が食い違っています。
まず、日本にとって北方領土は「返還」されるべき土地です。
逆にロシア側の視点に立つと、それは戦争で獲得した領土であって、条件次第で「渡す(割譲)」対象です。
相手のモノを返すのではなく、自分の土地をあげるわけですから、よほどの旨味がないと実現しません。
極東ロシアの辺境のうち、北方四島は特に過疎化が進み、インフラの遅れが目立つなど、21世紀の生活水準とは思えません。されど、経済支援だけで手放せる土地ではなく、そこには2つの理由があります。
ひとつは北方領土がオホーツク海の入口にあたり、ロシア海軍が出入りする海峡があるからです。
オホーツク海は原子力潜水艦を隠せるため、核の反撃能力を確保するうえで欠かせません。加えて、国後・択捉島の周辺海域は冬でも凍らず、長らく不凍港を求めてきたロシアの重要海域です。
そんな北方四島を日本に渡せば、自衛隊や米軍の監視が厳しくなり、軍事的には不利益しかありません。
この点は日本側も分かっており、米軍基地を置かない約束も浮上しました。ところが、この妙案は日米同盟にヒビを入れかねず、日米の離間を狙う相手の思うツボでしょう。
日米同盟とは日本に米軍基地を置き、アメリカに守ってもらう関係です。
日本の土地にもかかわらず、基地を置けない制約を課せば、同盟における「例外」になります。そうなると、次は別の例外につながりかねず、「尖閣諸島は対象外」になるかもしれません。
2つ目の理由として、ロシアは憲法上は領土割譲をできないからです。2020年に憲法改正を行い、他国への領土割譲が禁止されましたが、ここには北方領土も含まれています。
厳密にいえば、政治力と法解釈で乗り切れるものの、よほどの旨味がないと国民は納得せず、ほとんど不可能に近いです。
たとえば、日本がアメリカとの軍事同盟を切って、ウクライナ侵攻を支持したあげく、最低でも中立化を実現しないと、まともに取り合ってくれません。
適切な距離感を保つべき
アメリカに対する反発心からか、日本ではロシアに変な幻想を抱き、関係改善を叫ぶ「親露派」がいます。対米依存の反動が親露感情を生み、自主外交を望む気持ちと合わさり、一定の需要を満たしてきました。
しかし、いまの情勢下で単独接近したら、日米同盟は言うまでもなく、日欧関係にも悪影響を与えます。対中国・対北朝鮮を考えると、自由主義陣営の結束・支援は欠かせず、対ロシアで足並みをそろえるべきです。
いたずらに関係改善を進めても、自由主義陣営の結束を乱すだけに終わり、「労多くして、功少なし」のごとく、最終的には日本が損するだけ。
ロシアがウクライナから手を引かず、帝国主義的な侵略を続ける限り、日本は対露関係を積極的には進めない、経済・政治交流を限定するべきです。

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