アメリカ海軍の「ズムウォルト級」駆逐艦が失敗したわけ

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全く新しいコンセプト

ステルス軍艦の就役が進むなか、まさに「近未来」というべき船があります。

それが「ズムウォルト級」駆逐艦であって、次世代艦として米海軍の主力を担う・・・はずでした。

ところが、コスト問題などに悩まされたあげく、その建造数は当初計画の32隻ではなく、わずか3隻で打ち切られました。

従来型の駆逐艦とは全く違い、新しいコンセプトの新鋭艦にもかかわらず、なぜ失敗したのでしょうか？

東西冷戦中のアメリカにおいて、ステルス艦に大量のミサイルを組み込み、それを対ソ連の切り札にする構想が浮かびます。このアイデアは冷戦終結後も生き延び、次世代戦闘艦の計画に影響を与えました。

その後、2000年代に多くの巡洋艦・駆逐艦が退役すると、優れたステルス性能と多数の垂直発射装置（VLS）を持ち、陸・海・空の全てに対処できる「万能艦」を求めます。

この理想が最終的に「ズムウォルト級」を生みました。

近未来的なデザイン（出典：アメリカ海軍）

そのズムウォルト級の特徴といえば、SF映画に出てきそうな外見をしており、徹底的にステルス性を追求しました。

たとえば、内向きの傾斜で電波は上方にハネ返り、レーダーに映らないようにしました。そして、レーダー反射面積を極限するべく、マストの廃止、通信アンテナの壁面への固定、格納式主砲の採用など、外部の突起物を限りなく減らしています。

その結果、1万トン以上の排水量にもかかわらず、レーダーでは従来の1/50にしか映りません。