アメリカ海軍の「ズムウォルト級」駆逐艦が失敗したわけ

アメリカのステルス軍艦 アメリカ
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駆逐艦としては失敗作

ここまで見るとすばらしい高性能艦に思えますが、残念ながら「ズムウォルト級」の一般評価は「カネだけかけた失敗作」という酷評ぶりです。

前述のように本来は32隻も量産されるべきところ、予算削減とコスト超過のせいでわずかに3隻で打ち切られ、米海軍の将来を担う主力艦ではなく、単なる実験艦に終わりました。

兵装の要となるVLSシステムも、当初は126セルという数に長射程のSM-2対空ミサイル、そして弾道ミサイルにも対処可能な「SM-3迎撃ミサイル」を載せるはずでした。

しかし、実際のVLSシステムは80セルにとどまり、防空能力も射程50kmのESSMミサイルに落とされました。

新型主砲もロケット補助推進を使った射程150kmのGPS誘導弾を搭載するつもりでしたが、こちらもコスト削減で中止になりました。

さらに、電磁レールガンの搭載とその消費電力の大きさを解決すべく、大出力の発電機を備えたものの、この開発計画も2021年に白紙化されました。こうした経緯を考えると、代わりとなる極超音速兵器も本当に実現するかは怪しいです。

最終的に能力が抑えられた「ズムウォルト級」(出典:米海軍)

すなわち、「ズムウォルト級」は万能艦を目指していろいろ詰め込もうとしたところ、予算難を理由に開発がうまくいかず、当初計画よりも能力が限られてしまいました。

その能力はイージス艦を超える5,000億円という建造費に対して釣り合っておらず、量産重視の駆逐艦としては使い勝手がよくありません。

中国に対する優勢確保が課題となっているなか、あまりに高価な「ズムウォルト級」は撃沈を恐れて投入できないなど、かえって負担になっているとも指摘されています。

数的優勢にある相手に「質」で対抗するのは間違っていませんが、質的優位で対抗できる「量」にも限界があるのです。

現実世界では少数の高額・高性能兵器よりも、低コストでそこそこの性能の兵器を量産した方がよく、「ズムウォルト級」の失敗を経験したアメリカはいま使っている「アーレイ・バーク級」イージス艦の改良型にシフトしました。

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