軍事支援はしている?
以前の記事において、ウクライナ支援の意義について述べ、なぜ日本も行うべきかを説明しました。

では、実際に日本はどう支援できるのか?
すでに人道的支援、復興に向けた資金援助を行い、ウクライナからも感謝されてきました。憲法と国内世論との兼ね合いから、日本は殺傷能力のある武器を送れず、どうしても人道支援がメインになります。
この事情はウクライナ側も理解しており、欧米諸国には武器・弾薬を求めるものの、日本にはそのような要請はしません。
さはさりながら、日本からの軍事支援はゼロではなく、防弾チョッキや戦闘服、戦闘糧食を送り、トラックなどの自衛隊車両も100両以上を供与しました。また、直接支援ではないにせよ、アメリカにPAC-3ミサイルを逆輸出することで、その分だけウクライナに渡せるようにしています。
あくまで現行法の範囲内とはいえ、できる限りの軍事支援はしているわけです。
旧式装備は送ってもいい
しかし、第二次トランプ政権の発足にともなって、アメリカからの軍事支援は細くなり、ヨーロッパだけで支えきれるかは微妙です。このような情勢変化を受けて、日本も自由主義陣営の一員として、本格支援に乗り出すときかもしれません。
別に最新兵器を渡す必要はなく、更新が近い装備品や退役車両でも役立ち、ウクライナ側はもらえるならば、何でも使いたいのが本音です(国家存亡の危機だから当たり前)。
それゆえ、提供済みの1/2tトラックと高機動車に加えて、FH70榴弾砲、73式装甲車、ホーク防空ミサイルあたりは渡してもいいでしょう。旧式といえども、装甲車はあるに越したことはなく、FH70とホーク・ミサイルは他国も供与してきました。
82式指揮通信車も廃棄するぐらいなら、ウクライナに装甲車として送り、使ってもらった方がいいです。
法律上の制約はあれども、日本は「共同開発」の体裁の下、フィリピンに中古護衛艦を売り払い、抜け道を作ろうとしています。実際は退役兵器の輸出にもかかわらず、先方からの要求にしたがって、少し手を加えたりすると、共同開発になるという論法です。
日本が得意とする「解釈」ですが、この謎理論の前例に基づけば、旧式兵器にウクライナ語のラベルを貼り、共同開発の装備として送れるでしょう。
実戦データを得られる
むろん、ウクライナ側の本音としては、戦車と装甲車、火砲、防空ミサイルがほしく、本当は日本にも求めたいはずです。日本でたとえると、90式戦車と99式自走砲、03式中距離防空ミサイル、01式軽対戦車ミサイル、91式携帯地対空誘導弾、87式自走高射機関砲あたりでしょう。
当然ながら、防衛力の弱体を招くような供与はできず、敵に鹵獲される可能性を考慮すれば、高性能なものは渡したくありません。
一方、「リアル」な視点で考えると、日本の装備品は実戦経験がなく、本当に通用するかは分かりません。もしウクライナに渡した場合、貴重な実戦データが得られるとともに、戦場における能力が判明します。
紛れもない事実として、ウクライナは西側兵器の「実験場」になり、ウクライナ側もこれを承知の上です。ウクライナは武器がほしく、提供国は実戦データがほしい。すなわち、両者の利害は一致しており、Win-Winな関係なのです。
訓練と部品供給のメドが立ち、まとまった数を用意できれば、90式戦車も検討対象になり得ます。90式戦車は徐々に退き、いくつかは予備保管されますが、10式戦車で早期更新すれば、防衛力に穴は空きません。
建機、地雷処理機は役立つ
一方、武器以外の有力な支援として、地雷処理用の装備、建設用の重機があげられます。
今回の戦争では両軍とも地雷原を敷き、それぞれの防衛線を強化していますが、反攻作戦に出たり、なんとか領土を奪還した場合、とにかく地雷を除去せねばなりません。
戦後復興と民間人の被害防止など、人道支援にも該当することから、日本も金属探知機と地雷処理機、地中レーダーを送り、現地の地雷除去で活躍してきました。特に地中レーダーは金属探知機とは違い、金属の破片などの誤探知が少なく、地雷を見つけやすいと評判です。
日本が送った地雷処理機(出典:ウクライナ軍)
次に建設重機についてですが、これは最前線での陣地構築に役立ち、ウクライナ側の防衛線を支えています。ロシア軍がジリジリ前進しているとはいえ、要塞化された場所の攻略は難しく、長期間にわたって持ちこたえてきました。
ウクライナ側が塹壕を掘り、ロシア軍を足止めしている以上、陣地構築用の掘削機やブルドーザーが欠かせず、前線まで資材を運ぶ車両も必要です。
日本は武器・弾薬を送れないなら、せめて建機大国として重機を送り込み、前線の要塞化を支援すべきでしょう。中古品の供与で問題はなく、日本の得意分野を活かせる支援です。
なお、これも地雷除去と同じく、戦後復興に貢献するほか、停戦後の再侵攻を防ぎ、平和維持につながります。
なぜなら、たとえ停戦が実現したとしても、ロシアは再び侵攻する可能性が高く、強固な防衛線で抑止、あるいは撃退せねばなりません。前述のとおり、物量と人海戦術をもってしても、なかなか要塞化された部分は抜けず、敵に多大な損害を強いながら、半年〜1年という時間を稼いできました。
これはロシア側も痛感しており、さらに防衛線を強化されると、その分だけ再侵攻のハードルは高くなります。つまり、建機で要塞化を支援すると、現在の防衛線強化と人道支援のみならず、将来の再侵攻リスクを下げられます。
アジア勢を外交で押す
最後に外交面でのアシストについて。
日本は当初から外交上の支援に取り組み、2023年の広島サミットではゼレンスキー大統領を招き、G7各国との首脳会談だけでなく、韓国やインド、インドネシアとの会談の機会を設けました。
まさに日本外交の真骨頂ですが、まだまだできることはあります。
たとえば、日本は砲弾生産量が少なく、弾薬供給では貢献できないため、陸軍大国の韓国を誘い、台湾とオーストラリアなどを加えながら、アジア勢による支援体制を目指すのも一案です。
アジア諸国は日和見が多く、ウクライナへの支援どころか、対露制裁すらほとんどしていません。そこで日本が音頭をとり、経済制裁だけでも行うよう、積極的な外交で促すべきです。

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