沖縄より東は手薄なまま
中国の軍事力拡張と海洋進出を受けて、日本は南西諸島の防衛力強化に取り組み、空白地帯の解消を目指してきました。その結果、主要各島への自衛隊配備が進み、約15年で防衛態勢を固めました。このあたりは以前の記事で解説したとおりです。

されど、沖縄より東に目を向けると、大東諸島には自衛隊がおらず、警戒監視網の穴となっています。さらに、小笠原諸島は中国の対米防衛線、いわゆる第2列島線上にあるにもかかわらず、海上自衛隊の小さな基地しかなく、防空用のレーダーすらありません。
同じ第2列島線でいえば、もっと南の硫黄島・南鳥島には基地があれども、その機能は限られており、やはり警戒監視能力が足りていません。
この空白地帯を突くがごとく、最近は中国軍が定期的に現れながら、その動きを活発化させています。つまり、中国が対米防衛線の構築を図り、レアアースを含む海洋権益を狙うなか、沖縄より東の海域は手薄なままです。
警戒監視と緊急退避先
この現状に日本政府も危機感を抱き、まずは大東諸島に航空自衛隊を送り込み、移動式のレーダーを配備するとともに、必要に応じて「いずも型」軽空母を派遣するそうです。「いずも型」軽空母を使えば、常時警戒こそできないものの、一時的に空白を埋められます。
また、硫黄島の基地機能を拡張するべく、新たに桟橋などの港湾施設を作り、戦闘機の運用も視野に入れました。硫黄島といえば、太平洋戦争で日米が衝突した激戦地ですが、現在は海上・航空自衛隊が駐屯しています。
ただ、飛行場とレーダーはあるとはいえ、近年は火山活動の影響で隆起が進み、滑走路の整備に苦労してきました。しかも、島の周囲は浅瀬と隆起した海底しかなく、輸送艦のような船は接岸できません。
それゆえ、いまなお硫黄島への補給は難しく、自衛隊内でも1・2位を争う「僻地」ですが、中国軍の中距離弾道ミサイルを除けば、彼らの射程圏外にある後方地帯です。
そこで滑走路の隆起対策を進めながら、桟橋で輸送艦に対応できるようになると、補給状況は大きく改善するほか、戦闘機などの緊急退避先になり得ます。
ロシア=ウクライナ戦争でも分かるとおり、敵が初戦で航空基地を狙ってくる以上、こちらは急いで空中退避せねばなりません。このとき、比較的安全な後方に降り立ち、航空戦力の温存を図らねばならず、硫黄島はその有力候補になるわけです。
硫黄島
こうした役割は南鳥島にも当てはまり、すでに長距離ミサイルの試験に使うなか、滑走路の拡張案も浮上しました。南鳥島も短距離ミサイルの射程圏外にあるため、拡張した滑走路は緊急展開に役立ち、一時的な退避場所として機能するでしょう。
仮に台湾有事で米中が衝突すれば、中国は在日米軍基地と自衛隊基地を狙い、できるだけ航空戦力を削ごうとします。だからこそ、多くの緊急退避先を持たねばならず、今回の硫黄島・南鳥島の拡張はもちろん、オーストラリアへの空自の一時展開、特定利用空港の指定もその一環です。
そして、硫黄島と南鳥島の位置を見ると、それぞれマリアナ諸島(米領)の北・北東にあります。米軍はグアムを太平洋の重要拠点として使い、最近はテニアン島の飛行場も復活させました。米軍が対中国戦でマリアナを重視する以上、硫黄島と南鳥島の重要性も関連して高まり、マリアナと日本を結ぶ役割を果たします。
なお、南鳥島は日本の最東端だけではなく、排他的経済水域(EEZ)の基点にあたり、経済安全保障上も欠かせません。周辺海域には多くのレアアースが眠り、採掘技術と採算性の課題はあれども、最大で数百年分の埋蔵量があるとされています。
同じEEZとレアアース関連なら、沖ノ鳥島も重要な基点であって、その北西には大東諸島、北東には硫黄島がある点を考えると、やはり警戒監視能力を強化すべき島々です。

一方、小笠原諸島の父島に空港を作る案があるも、具体的な検討作業には入っておらず、その実現性は不透明なままです。しかし、昔から空港建設の要望は強く、防衛上の意義をふまえると、構想が進む可能性は大いにあります。もし空港建設が実現すれば、自衛隊が進出する可能性が高く、防空レーダーも配備されるでしょう。
ここまでをまとめると、南西諸島への自衛隊配備がひと段落つき、今度は沖縄以東の防衛態勢を強化するべく、「第二段階」に向けて動き始めました。それは警戒監視網の穴を埋めるのみならず、戦闘機の一時避難先を整備する計画です。


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